この記事の内容
- インピーダンスとは何か
- インピーダンスは交流回路で働く
- インピーダンスを構成するものには、抵抗とリアクタンスがある
- リアクタンスには誘導性と容量性の2種類がある
- 直列回路と並列回路のインピーダンスの求め方
- 記号法の表示と虚数単位の付け方
について説明します。
インピーダンスとは電圧と電流の比
インピーダンスとは何か ということを一言でいえば交流回路の 電圧と電流の比 ということになります。
ちなみに、直流回路の 電圧と電流の比 は 抵抗 ということになります。
つまり、インピーダンスは 交流回路において抵抗 のような働きをするものです。
ここでは、交流回路における インピーダンス について説明します。
交流の電源にモーターやテレビなどの電気製品をつなぐと、当然ですが回路に電流が流れます。
このときの回路の 電圧と電流の比 を インピーダンス といいます。
インピーダンスは交流回路において 電流の流れを妨げる働きするもの といえます。
つまり 電流の流れにくさ を表しています。
インピーダンスを構成するもの
インピーダンスは 抵抗とリアクタンス で構成されます。
- インピーダンスは抵抗とリアクタンスで構成される。
- リアクタンスには誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスがある。
- インピーダンス、リアクタンスの記号と単位は、次の図を参照してください。
インピーダンスの記号と単位
インピーダンスの記号は \(\dot{Z}\) を使います。
インピーダンスの単位は「抵抗」と同じく [Ω](オーム)を使います。
一般的に交流回路の負荷は \(\dot{Z}\) を使って負荷インピーダンスを表します。
\(\dot Z\)
記号の上に・(ドット)があるときは \(\dot{Z}\) は ベクトル であることを表しています。
ドットが無い \(Z\) のときは数値などの スカラー量 を表します。
スカラー量は、大きさのみで方向を持ちません。
また、ベクトルを \(Z\) で表し、大きさを \(|Z|\) 絶対値で表す場合もあります。
インピーダンスの 記号には \(Z\) を使い、単位には抵抗と同じようにオーム [Ω] を使います。
インピーダンスの記号法表示
インピーダンスを記号法で表示すると
実数部と虚数部がある。
\(Z=R+jX\) [Ω]
インピーダンスの実数部
実数部は抵抗の部分でレジスタンス \(R\) になる。
記号は \(R\) で単位は [Ω] を使う。
インピーダンスの虚数部
虚数部はリアクタンスの \(jX\) になる。
記号は \(X\) で単位は [Ω] を使う。
誘導性リアクタンス
誘導性リアクタンスは \(X_L\) になる。
記号は \(X_L\) で単位は [Ω] を使う。
容量性リアクタンス
容量性リアクタンスは \(X_C\) になる。
記号は \(X_C\) で単位は [Ω] を使う。
コイルとコンデンサの位相の覚え方
交流回路に コイルやコンデンサ を接続すると 電圧と電流の 位相 に 進みや遅れ が生じます。
- コイルの位相の覚え方
-
コイル\(\cdots ELI\)(エリー)と覚えましょう。
\(E\)(電圧)、\(L\)(コイル)、\(I\)(電流)の順なので、電圧が電流より\(\cfrac{π}{2}\)(90度)進む。
- コンデンサの位相の覚え方
-
コンデンサ\(\cdots ICE\)(アイス)と覚えましょう。
\(I\)(電流)、\(C\)(コンデンサ)、\(E\)(電圧)の順なので、電流が電圧より\(\cfrac{π}{2}\)(90度)進む。
交流回路においても、オームの法則が成立します
★ オームの法則は交流回路でも使うことができます。
\(R=\cfrac{V}{I}\) [Ω]
次の式を見れば分かる通り 抵抗 \(R\) の部分が インピーダンス \(Z\) に変わっただけです。
\(\dot{Z}=\cfrac{\dot{V}}{\dot{I}}\) [Ω] \(\cdots\)インピーダンス
\(\dot{V}=\dot{Z}\dot{I}\) [V] \(\cdots\) 電圧
\(\dot{I}=\cfrac{\dot{V}}{\dot{Z}}\) [A] \(\cdots\) 電流
図のように 抵抗、コイル、コンデンサ が直列の
負荷 \(\dot{Z}\) を交流電源 \(\dot{E}\) に接続した回路の
端子電圧を \(\dot{V}\) 電流を \(\dot{I}\) とします。
このときの、電圧 \(\dot{V}\) と電流 \(\dot{I}\) の比が インピーダンス です。
リアクタンスの大小で誘導性・容量性に変化する
インピーダンスは 抵抗 と リアクタンス で構成されています。
リアクタンスの大小
- \(X_L>X_C\) のときは 誘導性リアクタンス
- \(X_L < X_C\) のときは 容量性リアクタンス
誘導性リアクタンス
誘導性リアクタンスの インピーダンス を図にすると、次のようになります。
誘導性リアクタンス
電圧のベクトルから電流を取り除くと インピーダンスベクトル になります。
この回路においては、誘導性リアクタンス が大きいので力率は 遅れ力率 になります。
一般的に 力率の遅れや進み は 電圧を基準 にして考えます。
遅れ力率 を改善するためのものとして、進相コンデンサ を使用することがあります。
抵抗とコイルを直列に接続した回路は RL直列回路 といいます。
容量性リアクタンス
容量性リアクタンスの インピーダンス を図にすると、次のようになります。
容量性リアクタンス
電圧のベクトルから電流を取り除くとインピーダンスベクトルになります。
この回路においては、容量性リアクタンス が大きいので力率は 進み力率 になります。
一般的に 力率の遅れや進み は 電圧を基準 にして考えます。
進み力率を改善するためのものとして、分路リアクトル を使用することがあります。
抵抗とコンデンサを直列に接続した回路は RC直列回路 といいます。
直列回路のインピーダンスの求め方
直列回路では電流を基準に考える
直列回路では回路を流れる電流 \(I\) が共通になるので 電流を基準にベクトルを描きます。
★ 図のように、抵抗、コイル、コンデンサが 直列 に接続されている回路があります。
この回路のインピーダンスベクトルは、次のようになります。
インピーダンスを記号法で表示する
★ インピーダンス \(Z\) を記号法で表すと、次のようになります。
\(Z=R+j(X_L-X_C)\quad\rm[Ω]\) になります。
\(X=X_L-X_C\) の値が プラスなら 誘導性リアクタンス になり
\(X=X_L-X_C\) の値が マイナスなら 容量性リアクタンス になります。
インピーダンスベクトル図からわかるように、合成インピーダンスは三平方の定理で求められます。
\(Z=\sqrt{R^2+X^2}\)\(=\sqrt{R^2+(X_L-X_C)^2}\) [Ω]
カッコ内の \((X_L-X_C)\) は、\(X_C\) が大きいと値がマイナスになリますが、2乗をするとプラスになるので気にする必要はありません。
回路の電流は
\(I=\cfrac{E}{Z}\) [A]
各素子の端子電圧は、次のようになります。
\(V_R=RI\) [V]
\(V_L=X_LI\) [V]
\(V_C=X_CI\) [V]
例 題
図のような交流回路があります。
電源電圧の実効値 \(100\) [V]
抵抗 \(40\) [Ω]
コイルのリアクタンス \(80\) [Ω]
コンデンサのリアクタンス \(50\) [Ω]
のとき全体のインピーダンス \(Z\) [Ω] と 回路に流れる電流 \(I\) [A] を求めよ。
<解答例>
抵抗の値、コイルとコンデンサのリアクタンスが
わかっているので、インピーダンスは次の式で求められます。
\(Z=\sqrt{R^2+(X_L-X_C)^2}\)\(Z=\sqrt{40^2+(80-50)^2}=50\) [Ω]
電流はオームの法則から
\(I=\cfrac{100}{50}=2\) [A] になります。
並列回路のインピーダンスの求め方
並列回路では電圧を基準に考える
並列回路では回路に掛かる電圧 \(E\) が共通になるので 電圧を基準にベクトルを描きます。
★ 図のように、抵抗、コイル、コンデンサが 並列 に接続されている回路があります。
この回路のインピーダンスを 逆数 で表すと、次のようになります。
\(\cfrac{1}{Z}=\cfrac{1}{R}+\cfrac{1}{jX_L}+\cfrac{1}{-jX_C}\) [Ω]
回路に流れる電流 \(I\) は
\(I=\cfrac{E}{Z}\)\(=E\left(\cfrac{1}{R}+\cfrac{1}{jX_L}+\cfrac{1}{-jX_C}\right)\) [A] \(\cdots(1)\)
★ 各素子に流れる電流は、次のようになります。
\(I_R=\cfrac{E}{R}\) [A]
\(I_L=\cfrac{E}{jX_L}\)\(=-j\cfrac{E}{X_L}\) [A]
\(I_C=\cfrac{E}{-jX_C}\)\(=j\cfrac{E}{X_C}\) [A]
各電流をベクトル図にすると、次のようになります。
電流のベクトル図からわかるように、回路に流れる電流 \(I\) は三平方の定理で
\(I=\sqrt{{I_R}^2+{I_X}^2}\)\(=\sqrt{{I_R}^2+(I_L-I_C)^2}\)\(\cdots(2)\) で求められます。
カッコ内の \((I_L-I_C)\) は、\(I_C\) が大きいと値がマイナスになリますが、2乗をするとプラスになるので気にする必要はありません。
式(2)を変形すると
\(I=\sqrt{{I_R}^2+(I_L-I_C)^2}\)\(=\sqrt{\left({\cfrac{E}{R}}\right)^2+\left(\cfrac{E}{ωL}-ωCE\right)^2}\)
\(I=E\sqrt{\left({\cfrac{1}{R}}\right)^2+\left(\cfrac{1}{ωL}-ωC\right)^2}\cdots(3)\)
式(3)の両辺を \(E\) で割ります。
\(\cfrac{I}{E}=\cfrac{1}{Z}=\cfrac{E}{E}\sqrt{\left({\cfrac{1}{R}}\right)^2+\left(\cfrac{1}{ωL}-ωC\right)^2}\)
★ インピーダンス \(Z\) は
\(Z=\cfrac{1}{\sqrt{\left({\cfrac{1}{R}}\right)^2+\left(\cfrac{1}{ωL}-ωC\right)^2}}\) で求められます。
並列回路のインピーダンスの求め方
RLC並列回路でインピーダンスを求める場合は
RLC並列回路に流れる電流を求めて
\(Z=\cfrac{E}{I}\)
から求めるほうが簡単な場合が多いです。
例 題
図のようなRLC並列回路があります。
電流 \(I\) と 全体のインピーダンス \(Z\) を求めよ。
<解答例>
抵抗を流れる電流を \(I_R\)
コイルを流れる電流を \(I_L\)
コンデンサを流れる電流を \(I_C\) とします。
\(I_R=\cfrac{E}{R}\)\(=\cfrac{120}{20}=6\) [A]
\(I_L=\cfrac{E}{X_L}\)\(=\cfrac{120}{10}=12\) [A]
\(I_C=\cfrac{E}{X_C}\)\(=\cfrac{120}{30}=4\) [A]
回路の電流 \(I\) は
\(I=\sqrt{6^2+(12-4)^2}=10\) [A]
回路のインピーダンスは
\(Z=\cfrac{E}{I}=\cfrac{120}{10}=12\) [Ω] になります。
ややこしい虚数単位 j の付け方
交流回路のインピーダンスを複素数で表示するとき、虚数単位の \(j\) がでてきます。
この \(j\) の付け方について 簡単な方法があります。
虚数単位の \(j\) は、2乗すると -1 になります。
虚数単位 \(j\) を付ける場所
- 虚数単位がややこしくなるのは、どこに付けたらいいかわからない。
- \(+j、-j\) どっちになるかわからない。ということではないでしょうか
虚数単位 \(j\) は、\(ω\)(オメガ)の前に \(+j\) を付けると覚えましょう。
これだけを覚えておけば、かなりの部分が解決すると思います。
虚数単位の意味
虚数単位にはどんな意味があるかというと
次のような意味があります。
- \(+j\) は反時計方向に90°移動します。
- \(-j\) は時計方向に90°移動します。
リアクタンスの表示方法
★ \(j\) を \(ω\) の前に付けると覚えておけば、あとは式を変形するだけで符号の変化もわかります。
リアクタンス | 数式 | ||
---|---|---|---|
誘導性リアクタンス | \(X_L=ωL\) | \(X_L=jωL\) | \(jX_L=jωL\) |
容量性リアクタンス | \(X_C=\cfrac{1}{ωC}\) | \(X_C=\cfrac{1}{jωC}\) | \(-jX_C=-j\cfrac{1}{ωC}\) |
誘導性リアクタンスの表示方法
誘導性リアクタンスは、\(ωL、X_L\) と表します。
虚数単位を \(ω\) の前につけると、\(jωL\) となります。
\(X_L=ωL\)
\(X_L=jωL\)
\(jX_L=jωL\)
※表示の仕方は、個々の書籍などの説明により違う場合があります。
例えば
\(X_L=jωL\)
\(jX_L=jωL\) のように \(j\) を \(X_L\) に付けたり、付けなかったりします。
容量性リアクタンスの表示方法
容量性リアクタンスは、\(\cfrac{1}{ωC}、X_C\) と表します。
虚数単位を \(「ω」\) の前につけると、\(\cfrac{1}{jωC}\) となります。
\(X_C=\cfrac{1}{ωC}\)
\(X_C=\cfrac{1}{jωC}\)
\(-jX_C=\cfrac{1}{jωC}\)
※表示の仕方は、個々の書籍などの説明により違う場合があります。
例えば
\(X_C=\cfrac{1}{ωC}\)
\(-jX_C=\cfrac{1}{jωC}\) のように \(j\) を \(X_C\) に付けたり、付けなかったりします。
容量性リアクタンスは、分数になるので \(j\) があるとややこしくなります。
しかし、前述のように \(「ω」\) の前につけるとすれば
\(\cfrac{1}{jωC}\)
の分子と分母に \(j\) を掛けると、次のように表すことができます。
\(\cfrac{1}{jωC}\)\(=\cfrac{j}{j}×\cfrac{1}{jωC}\)\(=\cfrac{j×1}{j^2ωC}=\cfrac{j}{-ωC}\)\(=-j\cfrac{1}{ωC}=-jX_C\)
インピーダンス回路のまとめ
RLC直列回路のまとめ
RLC直列回路 | ||
---|---|---|
インピーダンス | 記号法 | \(Z=R+j(X_L-X_C\) [Ω] |
大きさ | \(Z=\sqrt{R^2+X^2}\) [Ω] | |
\(Z=\sqrt{R^2+(X_L-X_C)^2}\) [Ω] | ||
電流 | 大きさ | \(I=\cfrac{E}{Z}\) [A] |
\(I=\cfrac{E}{\sqrt{R^2+(ωL-\cfrac{1}{ωC})^2}}\) [A] | ||
\(I=\sqrt{{I_R}^2+{I_X}^2}\) [A] | ||
\(I=\sqrt{{I_R}^2+(I_L-I_C)^2}\) [A] | ||
端子電圧 | 大きさ | \(V_R=RI\) [V] |
\(V_L=X_LI\) [V] | ||
\(V_C=X_CI\) [V] |
RLC並列回路のまとめ
RLC直列回路 | ||
---|---|---|
インピーダンス | 記号法 | \(\cfrac{1}{Z}=\cfrac{1}{R}+\cfrac{1}{jX_L}+\cfrac{1}{-jX_C}\) [Ω] |
電流 | 記号法 | \(I=E\left(\cfrac{1}{R}+\cfrac{1}{jX_L}+\cfrac{1}{-jX_C}\right)\) [A] |
大きさ | \(I=\sqrt{{I_R}^2+(I_L-I_C)^2}\) [A] | |
各素子の電流 | 記号法 | \(I_R=\cfrac{E}{R}\) [A] |
\(I_L=\cfrac{E}{jX_L}\) [A] | ||
\(I_C=\cfrac{E}{-jX_C}\) [A] | ||
大きさ | \(I_L=\cfrac{E}{X_L}\) [A] | |
\(I_C=\cfrac{E}{X_C}\) [A] |
練習問題
問題1
図のように RLC直列回路があるとき
回路に流れる電流 \(I\) [A] を求めよ。
<解答例>
合成インピーダンスの式から
\(Z=\sqrt{R^2+(X_L-X_C)^2}\)
\(Z=\sqrt{16^2+(20-8)^2}\)\(=\sqrt{400}=20\) [Ω]
電流 \(I\) は
\(I=\cfrac{E}{Z}=\cfrac{100}{20}=5\) [A] になります。
問題2
図の回路に流れる電流 \(\dot{I}\) [A] と大きさ \(I\) [A] を求めよ。
<解答例>
合成インピーダンス \(\dot Z\) は
\(\dot Z=R+jX=8+j6\) [Ω]
電流 \(\dot{I}\) [A] は
\(\dot I=\cfrac{\dot E}{\dot Z}\)
\(\dot I=\cfrac{100}{8+j6}\)\(=\cfrac{100(8-j6)}{(8+j6)(8-j6)}\)
\(\dot I=8-j6\)
電流の大きさ \(I\) は
\(I=\sqrt{{I_R}^2+{I_X}^2}\)\(=\sqrt{8^2+6^2}=10\) [A]
問題3
抵抗 \(30\) [Ω] 自己インダクタンス \(0.1273\) [H]
の直列回路に交流電圧 \(100\) [V] を加えたところ
回路に \(2\) [A] の電流が流れた。
この回路のインピーダンス、誘導リアクタンス、及び周波数を求めよ。
<解答例>
問題を回路図にすると、次のようになります。
回路のインピーダンス \(Z\) は
\(Z=\cfrac{E}{I}=\cfrac{100}{2}=50\) [Ω]
誘導リアクタンス \(X_L\) は
\(X_L=\sqrt{Z^2-R^2}=\sqrt{50^2-30^2}=40\) [Ω]
周波数 \(f\) は
\(X_L=2πfL=40\) [Ω]
\(f=\cfrac{40}{2πL}=\cfrac{40}{2π×0.1273}\fallingdotseq 50\) [Hz] になります。
以上で「インピーダンスとは何か?インピーダンスの求め方と公式」の説明を終わります。