抵抗とコイルを直列に接続したRL直列回路について、電圧、電流、インピーダンスの関係について説明します。
RL直列回路とRC直列回路の考え方は、コイルとコンデンサの違いだけで基本的には同じです。
RL直列回路とは、次の図のように抵抗 \(R\) と 自己インダクタンス \(L\) のコイルを、直列に接続した回路のことをいいます。
■ RL直列回路の電流
RL直列回路では、抵抗 \(R\) と コイル \(L\) は直列に接続されているので、RL直列回路に流れる電流 \(I\) は 同じ電流 になります。
■ RL直列回路
\(jX_L=jωL\) [Ω]
\(X_L=ωL\) [Ω]
\(\dot{V_R}=R\dot{I}\) [V]
\(\dot{V_L}=jX_L\dot{I}=jωL\dot{I}\) [V]
\(\dot{E}=\dot{V_R}+\dot{V_L}\) [V]
\(\dot{E}=(R+jX_L)\dot{I}\) [V]
\(E=\sqrt{{V_R}^2+{V_L}^2}\) [V]
\(\dot{I}=\cfrac{\dot{E}}{R+jX_L}=\cfrac{\dot{E}}{R+jωL}\) [A]
\(I=\cfrac{E}{\sqrt{R^2+{X_L}^2}}=\cfrac{E}{\sqrt{R^2+(ωL)^2}}\) [A]
\(\dot{Z}=R+jωL\) [Ω]
\(Z=\sqrt{R^2+(ωL)^2}\) [Ω]
RL直列回路の概要
図のようなRL直列回路に交流電源 \(\dot{E}\) を接続したとき、RL直列回路に流れる電流を \(\dot{I}\) 抵抗とコイルの端子電圧を \(\dot{V_R}、\dot{V_L}\) とします。
■ RL直列回路の電圧
各素子の端子電圧と電源電圧の関係は、次のようになります。
抵抗 \(R\) の端子電圧 \(\dot{V_R}\) は
\(\dot{V_R}=R\dot{I}\) [V]
コイル \(L\) の端子電圧 \(\dot{V_L}\) は
\(\dot{V_L}=jX_L\dot{I}\) [V]
\(X_L=ωL\) なので
\(\dot{V_L}=jωL\dot{I}\) [V]
電源電圧を \(\dot{E}\) は
\(\dot{E}=\dot{V_R}+\dot{V_L}\)
\(\dot{E}=(R+jX_L)\dot{I}\) [V]
\(\dot{E}=(R+jωL)\dot{I}\) [V] になります。
電源電圧 \(\dot{E}\) は、直列接続なので、各端子電圧の ベクトルの和 になります。
■ RL直列回路のベクトル関係
抵抗 \(R\) とコイル \(L\) の直列回路では、電源電圧に対して遅れ電流が流れます。
• 電流を基準としてベクトルを描く
- 電流を基準として描きます。
- 抵抗の端子電圧 \(V_R\) を電流と同相に描きます。
- コイルの端子電圧 \(V_L\) を電流より \(\cfrac{\pi}{2}\) 進めて描きます。
- \(V_R\) と \(V_L\) のベクトル和が電源電圧 \(E\) になります。
■ RL直列回路の各電圧の大きさ
RL直列回路のベクトル図で、\(V_R・V_L・E\) は直角三角形ですから三平方の定理を用いると
\(E^2={V_R}^2+{V_L}^2\)
\(E=\sqrt{{V_R}^2+{V_L}^2}\)\(=\sqrt{(RI)^2+(X_LI)^2}\)\(=\sqrt{I^2R^2+{X_L}^2I^2}\)
回路に流れる電流 \(I\) の大きさは
\(X_L=ωL\) なので
RL直列回路のインピーダンスの大きさ
■ RL直列回路のオームの法則
RL直列回路の電圧 \(E\) 電流 \(I\) インピーダンス \(Z\) の間には、オームの法則が成り立ちます。
RL直列回路の合成インピーダンス \(Z\) は、電圧 \(E\) と電流 \(I\) の比になりますから
\(E=ZI=I\sqrt{R^2+{X_L}^2}\) [V]
\(I=\cfrac{E}{Z}\)\(=\cfrac{V}{\sqrt{R^2+{X_L}^2}}\) [A]
\(Z=\cfrac{E}{I}\)\(=\sqrt{R^2+{X_L}^2}\) [Ω]
\(X_L=ωL\) なので
\(Z=\sqrt{R^2+(ωL)^2}\) [Ω]
■ RL直列回路のインピーダンス角
抵抗 \(R\) 、コイルのリアクタンス \(X_L\)、インピーダンス \(Z\) の関係を示すと、次の図のようになります。
上のインピーダンスの関係の図からインピーダンス角は、次のように表されます。
\(\tan θ\)\(=\cfrac{V_L}{V_R}\)\(=\cfrac{X_L}{R}\)\(=\cfrac{ωL}{R}\)
\(θ=\tan^{-1}\cfrac{X_L}{R}\)\(=\tan^{-1}\cfrac{ωL}{R}\) [rad] になります。
記号法によるRL直列回路
交流を複素数で表す方法を 記号法 といいます。
次の回路は記号法によるRL直列回路です。
■ 直交座標表示
抵抗 \(R\) の端子電圧 \(V_R\) は、電流 \(I\) と同相なので
\(\dot{V_R}=R\dot{I}\) [V]
コイル \(L\) の端子電圧 \(\dot{V_L}\) は電流 \(\dot{I}\) より、\(\cfrac{π}{2}\) [rad] 位相が進みます。
\(\dot{V_L}=jX_L\dot{I}\) [V]
■ 虚数単位 \(j\) を付ける場所
- 虚数単位がややこしくなるのは、どこに付けたらいいかわからない。
- \(+j、-j\) どっちになるかわからない。ということではないでしょうか
■ 虚数単位 \(j\) は、\(ω\)(オメガ)の前に \(+j\) を付けると覚えましょう。
これを覚えれば、かなりの部分が解決すると思います。
- \(+j\) は反時計方向に90°移動します。
- \(-j\) は時計方向に90°移動します。
回路全体の電圧 \(\dot{E}\) は、RL直列接続では各端子電圧 \(\dot{V_R}\) と \(\dot{V_L}\) の和になりますから
\(\dot{E}\)\(=\dot{V_R}+\dot{V_L}\)\(=RI+jX_L\dot{I}\)\(=(R+jX_L)\dot{I}\)
したがって、回路に流れる電流 \(\dot{I}\) は
\(\dot{I}=\cfrac{\dot{E}}{R+jX_L}\) [A]
\(X_L=jωL\) なので
\(\dot{I}=\cfrac{\dot{E}}{R+jωL}\) [A] になります。
■ 極座標表示
\(\dot{V_R}=R\dot{I}\angle 0\) [V] (電流 \(\dot{I}\) と同相)
\(\dot{V_L}=X_LI\angle \cfrac{π}{2}\) [V] (電流 \(\dot{I}\) より \(\cfrac{π}{2}\) 進み)
\(\dot{E}\angle+θ(シータ)\) [V]
■ インピーダンスベクトル図
インピーダンスの関係を、図で表すと次のようになります。
この図のように表したものを、インピーダンスベクトル図、または インピーダンス三角形 といいます。
RL直列回路で電圧 \(\dot{E}\) と 電流 \(\dot{I}\) の関係は
合成インピーダンス \(\dot{Z}\) は、電圧 \(\dot{E}\) と 電流 \(\dot{I}\) の比で求められます。
合成インピーダンス \(\dot{Z}\) の複素数は、実数部が \(R\) で、虚数部が \(jX_L\) ですから、上のようなベクトル図になります。
■ インピーダンス角
インピーダンスベクトル図から、インピーダンス角 \(θ\) [rad] は
\(θ=\tan^{-1}\cfrac{X_L}{R}\) または
\(θ=\tan^{-1}\cfrac{ωL}{R}\) [rad] になります。
直列回路の力率について
直列回路の力率はインピーダンスで求めるときに
\(\cosθ=\cfrac{V_R}{E}=\cfrac{R}{Z}\) になります。
並列接続のときは
\(\cosθ=\cfrac{Z}{R}\) になります。
交流回路の電力には、皮相電力・有効電力・無効電力の3つがあります。 皮相電力・有効電力・無効電力と力率の関係は、図のように電力の三角形で表すことができます。 電力の三角形を覚えていれば、皮相電力・有効電力・無効電力の公式[…]
練習問題
問題1
抵抗 \(4\) [Ω] と自己インダクタンス\(10\) [mH] のコイルの直列回路がある。
この回路に、電圧 \(120\) [V]、周波数 \(\cfrac{150}{\pi}\) [Hz] の電圧を加えたときの合成インピーダンス \(Z\) の大きさと消費電力 \(P\) を求めよ。
<解 答>
RL直列回路の合成インピーダンスは
\(Z=\sqrt{R^2+(ωL)^2} 、ω=2πf\) になります。
コイルのリアクタンスを \(X_L\) とすると
\(X_L=2×\pi×\cfrac{150}{\pi}×10×10^{-3}=3\) [Ω]
数値を当てはめると
\(Z=\sqrt{4^2+3^2}=5\) [Ω]
\(I=\cfrac{E}{Z}=\cfrac{100}{5}=20\) [A]
消費電力は抵抗で消費する電力になります。コイルは電力を消費しません。
\(P=RI^2=4×20^2=1600\) [W]
問題2
図のような回路において、抵抗 \(8\) [Ω] とインダクタンス \(6\) [Ω] の各端子電圧 \(V_R、V_L\) を求めよ。
<解 答>
RL直列回路の合成インピーダンス \(Z\) は、次のようになります。
\(Z=\sqrt{R^2+{X_L}^2}\) で求められます。
\(Z=\sqrt{8^2+6^2}\)\(=\sqrt{100}=10\) [Ω] になります。
回路に流れる電流は、オームの法則で求められます。
\(I=\cfrac{E}{Z}=\cfrac{100}{10}=10\) [A]
各端子の電圧のベクトル図は次のようになります。
抵抗の端子電圧は
\(V_R=8×10=80\) [V]
コイルの端子電圧は
\(V_L=6×10=60\) [V]
問題3
図のような回路において、交流 \(E=100\) [V] の電圧を加えたところ抵抗 \(20\) [Ω] の端子電圧が \(80\) [V] になりました。
回路に流れる電流 \(I\) [A] とコイルのリアクタンス \(X_L\) [Ω]、回路全体のインピーダンス \(Z\) [Ω] の大きさを求めよ。
<解 答>
抵抗 \(20\) [Ω] の端子電圧から、オームの法則により電流を求めることができます。
\(I=\cfrac{V_R}{R}=\cfrac{80}{20}=4\) [A]
RL直列回路ですから、電流 \(I\) は回路を流れる電流と同じものになります。
RL直列回路の合成インピーダンス \(Z\) は、次のようになります。
\(Z=\cfrac{E}{I}=\cfrac{100}{4}=25\) [Ω] で求められます。
コイルのリアクタンスは、インピーダンスの式から求められます。
\(Z=\sqrt{R^2+{X_L}^2}\)
\(25=\sqrt{20^2+{X_L}^2}\)
\({X_L}^2=25^2-20^2=15^2\)
\(X_L=15\) [Ω] になります。
以上で「RL直列回路の概要」の説明を終わります。