テブナンの定理は、「複雑な回路を等価回路」に変換する法則です。
テブナンの定理により、等価電源と等価抵抗 を求めて「等価回路」に変換します。
等価回路に変換すれば、複雑な電気回路を オームの法則 を使って簡単に電流を求めることができます。
テブナンの定理とは、複雑な回路を「等価回路」に変換して、任意の場所の電流 を求める定理です。
テブナンの定理とは?
テブナンの定理のイメージ
テブナンの定理とは 複雑な回路網(電気回路)を 等価回路 に変換します。
等価回路に変換すれば、流れる電流はオームの法則で求めることができます。
テブナンの定理で重要なのが 等価電源と等価抵抗の求め方 になります。
テブナンの定理の名称について
- 鳳-テブナンの定理(ほう-テブナンのていり)
- ヘルムホルツ-テブナンの定理
- 等価電圧源表示
などの呼び方があります。
テブナンの定理を使う手順
図(1)のような、複雑な回路網に接続された、抵抗 \(R\) に流れる電流 \(I\) を求めるとします。
図(2)のように、テブナンの定理で 等価電源 \(V_0\) と等価抵抗 \(R_0\) の 等価回路 に変換します。
テブナンの定理 は 回路の任意の場所の電流 を求めるときに有効な定理です。
テブナンの定理の手順
- 電流を求めたい部分を切り離します。
- 等価電源 \(V_0\) を求めます。
- 等価抵抗 \(R_0\) を求めます。
(回路内部の 電圧源はすべて短絡 して除去します。)
(回路内部の 電流源はすべて開放 して除去します。) - テブナンの定理で、等価回路に変換します。
- 目的の電流 \(I=\cfrac{V_0}{R_0+R}\) [A] を求めます。
テブナンの定理の使い方(電圧源)
電気回路の電源は、電圧源 の場合が一般的です。ここでは、電源が電圧源の説明をします。
図のような、回路の電流 \(I\) を求める場合の、テブナンの定理の使い方を説明します。
等価電源の求め方
手 順
1.電流を、求めたい部分を切り離します。
2.等価電源 \(V_0\) を求めます。
\(V_0\) の求め方
等価電源 \(V_0\) は端子ab間の電圧です。
3.青の矢印の閉回路に、流れる電流 \(I_0\) を求めます。
オームの法則から
\(I_0=\cfrac{\rm電圧}{\rm抵抗}=\cfrac{15-6}{3+6}=1\) [A]
等価電源を求める2つの方法
上図の閉回路は、端子abを移動して
次の図のように考えても、電気的には同じになります。
\(V_0\) の値は、次の図の「左の回路」あるいは
「右の回路」のどちらかを計算すれば求められます。
左の回路の場合
端子bを、0 [V] として、電源電圧と電圧降下の電圧(電位)を考えます。
- 電源のプラス側の電圧は、15 [V] です。
- 3 [Ω] の抵抗により、3 [V] の電圧降下があります。
- 3 [Ω] の抵抗による電圧降下は、図の向きになります。
- 端子aの電圧は、15-3=12 [V] になります。
- \(V_0\) は端子abの電圧ですから \(V_0=12\) [V] になります。
右の回路の場合
端子bを、0 [V] として、それぞれの電圧(電位)を考えると。
- 電源のプラス側の電圧は、6 [V] です。
- 6 [Ω] の抵抗により、6 [V] の電圧降下があります。
- 6 [Ω] の抵抗による電圧降下は、図の向きになります。
- 端子aの電圧は、6+6=12 [V] になります。
- \(V_0\) は端子abの電圧ですから \(V_0=12\) [V] になります。
以上のことから、等価電源の値は
\(V_0=12\) [V] になります。
等価抵抗の求め方
等価抵抗 \(R_0\) は、端子ab間から見たときの抵抗値です。
回路内部のすべての電源を短絡させます。(電圧源なので短絡します。)
等価抵抗 \(R_0\) は、並列接続なので
\(R_0=\cfrac{3×6}{3+6}=2\) [Ω] になります。
テブナンの定理で等価回路に変換して電流を求める
求めた 等価電源と等価抵抗 から、等価回路 に変換します。
この等価回路の負荷抵抗に流れる電流 \(I\) を オームの法則 により求めると、次のようになります。
\(I=\cfrac{V_0}{R_0+R}\)\(=\cfrac{12}{2+4}=2\) [A]
テブナンの定理の使い方(電流源)
ここでは、電流源の場合の説明をします。
図のような、電流源回路の電流 \(I\) [A] を求めます。
等価電源の求め方
手 順
図1のように、抵抗を切り離して端子ab とします。
図2のように、抵抗の電圧降下を考えると 電位 がわかります。
b の電位は、オームの法則から
2 Ω × 12 A=24 V
a の電位は、オームの法則から
(2 Ω + 3 Ω + 1Ω) × 12 A=72 V
ab 間の 電位差 は
図3のように、a の電位とb の電位から求められます。
\(V_0=72-24=48\) [V]
等価抵抗の求め方
等価抵抗を求める場合、電流源を開放して取り除きます。
回路から電流源を取り除くと、図4の回路になります。
等価抵抗は
\(R_0=1+3=4\) [Ω] になります。
テブナンの定理で等価回路に変換して電流を求める
等価回路に変換する。
元の回路を等価回路に変換すると、図5の回路になります。
\(R\) [Ω] に流れる電流 \(I\) [A] は次のようになります。
\(I=\cfrac{V_0}{R_0+R}=\cfrac{48}{4+4}=6\) [A]
テブナンの定理でブリッジ回路を解く
図のようなブリッジ回路の電流 \(I\) [A] をテブナンの定理で求める場合
等価電源 \(V_0\) を、電位から求めることができます。
等価電源を求める
手 順
1.抵抗を切り離します。
図のように、中央の抵抗を切り離し、端子を b、c とします。
2.等価電源 \(V_0\) を求める。
それぞれの位置の電位は、次のようになります。
- \(a \cdots100\) [V]
- \(b \cdots100-20=80\) [V]
- \(c \cdots100-40=60\) [V]
- \(d \cdots 0\) [V]
等価電源 \(V_0=V_{bc}\) とすると
bの電位 \(80\) [V] 、 cの電位 \(60\) [V] から
等価電源 \(V_0=80-60=20\) [V] になります。
等価抵抗を求める
等価抵抗を求めるために、電源を短絡して整理します。
2つの並列抵抗が、直列接続になっています。
bc 間の合成抵抗が、等価抵抗 \(R_0\) [Ω] です。
\(R_0=\cfrac{20×80}{20+80}+\cfrac{40×60}{40+60}=40\) [Ω] となります。
テブナンの定理で等価回路に変換する
元の回路を等価回路に変換すると、図4の回路になります。
\(R\) [Ω] に流れる電流 \(I\) [A] は、次のようになります。
\(I=\cfrac{V_0}{R_0+R}=\cfrac{20}{40+10}=0.4\) [A]
テブナンの定理を検証する
テブナンの定理の検証をします。
次のような回路で
電流 \(I\) をテブナンの定理で求めよ。
という問題があるとします。
等価電源を求める
テブナンの定理で、\(V_0\) を求めます。
\(I_0=\cfrac{100}{25}=4\) [A] から
\(V_0=100-5×4=80\) [V]
等価抵抗を求める
次に、等価抵抗 \(R_0\) を求めます。
抵抗の並列接続なので、和分の積で求めます。
\(R_0=\cfrac{5×20}{5+20}=4\) [Ω]
テブナンの定理で等価回路に変換する
求めた \(V_0、R_0\) から
元の回路を等価回路にすると、次のようになります。
求める電流 \(I\) は
\(I=\cfrac{80}{8}=10\) [A] になります。
テブナンの定理の各要素に付いての検証
回路の各要素を、次の図のようにして考えて見ます。
合成抵抗を \(R\) とすると
\(R=5+\cfrac{20×4}{20+4}=\cfrac{25}{3}\) [Ω]
\(I_1=\cfrac{100}{\cfrac{25}{3}}=12\) [A]
\(I_2、I\) を 抵抗の分流の法則 で求める。
\(I_2=I_1×\cfrac{4}{20+4}=2\) [A]
\(I=I_1×\cfrac{20}{20+4}=10\) [A]
したがって、\(V_1=V_2=40\) [V]
\(V_1=100-5×12=40\) [V]
\(V_2=20×2=40\) [V]
各要素の数値
回路の負荷抵抗 \(4\) [Ω] にかかる電圧は
\(40\) [V] になり
テブナンの定理の \(V_0=80\) [V]
とは異なることに注意が必要です。
テブナンの定理の等価回路の数値
\(V_0=80\) [V] は、\(R_0\) と負荷抵抗 \(4\) [Ω] の電圧降下の和になります。
まとめ
テブナンの定理のまとめ
- 電流を求めたい部分を切り離します。
- 等価電源 \(V_0\) を求めます。
- 等価抵抗 \(R_0\) を求めます。
(回路内部の 電圧源はすべて短絡 して除去します。)
(回路内部の 電流源はすべて開放 して除去します。) - 等価回路に変換します。
- 目的の電流 \(I=\cfrac{V_0}{R_0+R}\) [A] を求めます。
以上で「テブナンの定理の使い方【任意の場所に流れる電流を求める定理】」の説明を終わります。