合成抵抗を求める計算式は、2つあります。
直列接続の計算式と並列接続の計算式です。
直列接続の合成抵抗は足し算 をすれば良いので簡単です。
並列接続の合成抵抗は、単純に足し算をすることができない ので注意が必要です。
この記事では、「直列接続の合成抵抗」と「並列接続の合成抵抗」の求め方を紹介します。
合成抵抗の公式と和分の積の公式
合成抵抗を求めるには、2つの公式があります。抵抗の直列接続の公式と並列接続の公式です。
抵抗が直列接続の時の合成抵抗の公式
図のように \(n\)個の抵抗が、直列接続になっています。
直列接続の合成抵抗 \(R_0\) の公式は、次のようになります。
\(R_0=R_1+R_2+R_3+\cdots+R_n\) [Ω]
直列接続の合成抵抗の求め方は、2個でも3個でもそれ以上でも、それぞれの抵抗の値を 足し算をすれば求める ことができます。
抵抗が並列接続の時の合成抵抗の公式
図のように \(n\)個の抵抗が、並列接続になっています。
並列接続の合成抵抗 \(R_0\) の公式は、次のようになります。
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{1}{R_1}+\cfrac{1}{R_2}+\cdots+\cfrac{1}{R_n}\) [Ω]
上の式では、合成抵抗 \(R_0\) が逆数になっています。
合成抵抗 \(R_0\) を求めるときは
\(R_0=\) の形に変形する必要があります。
和分の積の公式(抵抗2個が並列接続のときに使える公式)
和分の積の公式
\(R_0=\cfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}\) [Ω]
図のように、2つの抵抗 \(R_1\) と \(R_2\) が並列に接続されているときの
合成抵抗は、和分の積の公式を使うことができる。
合成抵抗 \(R_0\) は、次の式で表されます。
\(R_0=\cfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}\)
【重要】
■ ただし、「和分の積」の公式は、2個のときだけしか使えない。
■ 並列接続の合成抵抗は、元のそれぞれの抵抗の値より、必ず小さい値になります。
和分の積の公式の求め方
和分の積の公式は、並列接続の公式から求められます。
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{1}{R_1}+\cfrac{1}{R_2}\) を変形して
\(R_0=\cfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}\)
コンダクタンスについて
抵抗の逆数は コンダクタンス になります。
コンダクタンスは \(G\) で表し、記号に [S] ジーメンス を使います。
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{1}{R_1}+\cfrac{1}{R_2}+\cfrac{1}{R_3}+\cdots+\cfrac{1}{R_n}\) [Ω]
合成コンダクタンスを \(G_0\) で表すと
\(G_0=G_1+G_2+G_3+\cdots+G_n\) [S] となります。
直列接続の合成抵抗の求め方
直列接続の合成抵抗の計算例1
図のように、30Ωと15Ωの抵抗が、直列に接続されています。合成抵抗 \(R_0\) を求めよ。
直列接続の合成抵抗は、抵抗を足せば良いので
\(R_0=30+15=45\) [Ω] になります。
直列接続の合成抵抗の計算例2
図のように、10Ωと8Ωと9Ωの抵抗が、直列に接続されています。合成抵抗 \(R_0\) を求めよ。
直列接続の合成抵抗は、いくつあっても、それぞれの抵抗を足せば良いので
\(R_0=10+8+9=27\) [Ω] になります。
並列接続の合成抵抗の求め方
抵抗が3つ並列接続の合成抵抗の計算例
3つの抵抗30Ω、20Ω、12Ωが、並列接続の場合の合成抵抗の求め方は、次のように2つの方法があります。
- 和分の積を2回使う求め方
- 並列接続の合成抵抗の公式を使う求め方
和分の積を2回使う計算例
3つの抵抗30Ω、20Ω、12Ωの、2つの抵抗を選んで和分の積の公式を使います。
1回目の和分の積の公式の計算
3つの抵抗30Ω、20Ω、12Ωの並列接続の場合、どの抵抗の組み合わせでも良いのですが
計算しやすそうな、30Ωと20Ωの抵抗に、「和分の積」の公式を使います。
30Ωと20Ωの合成抵抗を \(R\) とすると
\(R=\cfrac{20×30}{20+30}=12\) [Ω]
2回目の和分の積の計算
1回目の和分の積の結果
12Ωの抵抗が、2つの並列接続の回路になりました。
和分の積の公式で、12Ωと12Ωの合成抵抗を計算すると
\(R_0=\cfrac{12×12}{12+12}=\cfrac{144}{24}=6\) [Ω] になります。
この場合は、\(12\) [Ω] が2個なので、\(12\) [Ω] の半分の \(6\) [Ω] になることはすぐに分かります。
並列接続の公式による計算例
並列接続の公式による計算
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{1}{R_1}+\cfrac{1}{R_2}+\cfrac{1}{R_3}\) の公式から
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{1}{30}+\cfrac{1}{20}+\cfrac{1}{12}\)
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{2}{60}+\cfrac{3}{60}+\cfrac{5}{60}\)
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{10}{60}=\cfrac{1}{6}\)
合成抵抗 \(R_0=\) の形に変形すると
\(R_0=6\) [Ω]
合成抵抗の公式の求め方
直列接続の合成抵抗が足し算になる理由
図のように、電圧 \(E\) [V] の回路に、\(n\) 個の抵抗が「直列」に接続されています。
回路に流れる電流を \(I\) [A] とすると、
各抵抗に流れる電流 \(I\) [A] は、同じ大きさです。
合成抵抗を \(R_0\) とすると、上の回路は次の回路と同じになります。
各抵抗に掛かる電圧を求める
図のように、それぞれの抵抗に掛かる電圧を
\(V_1\)、\(V_2\)、\(V_3\cdots\)\(V_n\)とすると
それぞれの抵抗にかかる電圧は
\(R_1\) にかかる電圧 \(V_1\)
\(R_2\) にかかる電圧 \(V_2\)
\(R_3\) にかかる電圧 \(V_3\)
\(R_n\) にかかる電圧 \(V_n\)
電源電圧 \(E\) は
\(E=V_1+V_2+V_3+\cdots+V_n\cdots(1)\) になります。
オームの法則 から
\(E=R_0I\)
\(V_1=R_1I\)
\(V_2=R_2I\)
\(V_3=R_3I\)
\(V_n=R_nI\) ですから
式(1)に代入すると
\(R_0I=R_1I+R_2I+R_3I+\cdots+R_nI\) になります。
両辺を、電流 \(I\) で割ると
\(R_0=R_1+R_2+R_3+\cdots+R_n\) [Ω] となります。
並列接続の合成抵抗の逆数がそれぞれの抵抗の逆数の和になる理由
図のように、電圧 \(E\) [V] の回路に、\(n\) 個の抵抗が「並列」に接続されています。
各抵抗にかかる電圧 \(E\) [V] は、同じ大きさです。
合成抵抗を \(R_0\) とすると、上の回路は次の回路と同じになります。
各抵抗に流れる電流
図のように、回路に流れる電流を \(I\) [A]
それぞれの抵抗に流れる電流を
\(I_1\)、\(I_2\)、\(I_3\cdots\)\(I_n\)とすると
それぞれの抵抗に流れる電流は
\(R_1\) に流れる電流 \(I_1\)
\(R_2\) に流れる電流 \(I_2\)
\(R_3\) に流れる電流 \(I_3\)
\(R_n\) に流れる電流 \(I_n\)
回路に流れる電流 \(I\) は
\(I=I_1+I_2+I_3+\cdots+I_n\cdots(1)\) になります。
オームの法則 から
\(I=\cfrac{E}{R_0}\)
\(I_1=\cfrac{E}{R_1}\)
\(I_2=\cfrac{E}{R_2}\)
\(I_3=\cfrac{E}{R_3}\)
\(I_n=\cfrac{E}{R_n}\) ですから
式(1)に代入すると
\(\cfrac{E}{R_0}=\cfrac{E}{R_1}+\cfrac{E}{R_2}+\cfrac{E}{R_3}+\cdots+\cfrac{E}{R_n}\) になります。
両辺を、電圧 \(E\) で割ると
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{1}{R_1}+\cfrac{1}{R_2}+\cfrac{1}{R_3}……\cfrac{1}{R_n}\) [Ω] となります。
最終的な合成抵抗の値は、\(R_0=\) の形で求めることができます。
合成抵抗の計算例
和分の積の計算例1
図のように、30Ωと20Ωの抵抗が、並列に接続されています。合成抵抗 \(R_0\) を求めよ。
2つの抵抗の並列接続の合成抵抗は、和分の積が使えます。
\(R_0=\cfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}\)
\(R_0=\cfrac{30×20}{30+20}=\cfrac{600}{50}=12\) [Ω]
和分の積の計算例2
図のように、50Ωと50Ωの抵抗が、並列に接続されています。合成抵抗 \(R_0\) を求めよ。
2つの抵抗の並列接続の合成抵抗は、和分の積が使えます。
\(R_0=\cfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}\)
\(R_0=\cfrac{50×50}{50+50}=\cfrac{2500}{100}=25\) [Ω] になります。
【重要】
並列に接続する抵抗が「同じ値」のときは、抵抗値を抵抗の数で割れば 合成抵抗 になります。
★ \(30\) [Ω] の抵抗を2個並列にした場合は
\(R_0=\cfrac{30}{2}=15\) [Ω] となります。
★ 同様に \(30\) [Ω] を3個並列に接続した場合は
\(R_0=\cfrac{30}{3}=10\) [Ω] となります。
直並列接続の合成抵抗の計算例1
図のように、端子 \(ab\)間に 並列接続された2つの抵抗 \(R_1\) と \(R_2\) が、1つの抵抗 \(R_3\) に直列に接続されています。
このような回路を、直並列接続回路といいます。
合成抵抗 \(R_0\) を求めよ。
直並列接続の場合は、並列になっている \(R_1\) と \(R_2\) を和分の積で求め
その合成抵抗と \(R_3\) の合成抵抗を求めます。
\(R_0=\cfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}+R_3\) [Ω]
直並列接続の合成抵抗の計算例2
図のように、端子 \(ab\)間に 並列接続された2つの抵抗 \(R_1\) と \(R_2\) が、1つの抵抗 \(R_3\) に直列に接続されています。
このような回路を、直並列接続回路といいます。
合成抵抗 \(R_0\) を求めよ。
\(R_2\) と \(R_3\) を1個にまとめて合成抵抗を計算して
その合成抵抗と \(R_1\) で「和分の積」で計算します。
\(R_0=\cfrac{R_1(R_2+R_3)}{R_1+(R_2+R_3)}\) [Ω]
複雑に見える抵抗の組み合わせでも、実際は直列と並列の組み合わせになっています。
直列と並列の合成抵抗を、計算することで最終的な合成抵抗を求められます。
練習問題
問題1
図のように、並列接続された20Ωと80Ωに、30Ωの抵抗が直列に接続されています。
合成抵抗 \(R\) を求めよ。
<解答例>
直並列接続の合成抵抗の計算のコツは、2つの抵抗を1個にまとめることです。
並列接続の場所は、「和分の積」を使います。
\(R=\cfrac{20×80}{20+80}+30=46\) [Ω]
問題2
図のように、直列接続された4Ωと14Ωに、12Ωの抵抗が並列に接続されています。
合成抵抗 \(R\) を求めよ。
<解答例>
\(4\) [Ω] と \(14\) [Ω] で \(18\) [Ω] になります。
\(18\) [Ω] と \(12\) [Ω] で「和分の積」を使います。
\(R=\cfrac{18×12}{18+12}=\cfrac{36}{5}\)
\(R=7.2\) [Ω]
問題3
3つ並列に接続された30Ωの抵抗と
2つ並列に接続された30Ωの抵抗が、直列に接続されています。
合成抵抗 \(R\) を求めよ。
<解答例>
左側の並列抵抗と右側の並列抵抗を求めて、それぞれの合成抵抗を足し算すれば求められます。
逆数を使った通常のやり方でも良いのですが
抵抗値が同じ場合の並列抵抗は個数で割れば合成抵抗を求められます。
関連記事:和分の積の使い方と並列接続された抵抗値が同じ場合の求め方
左側の合成抵抗 \(R_1=\cfrac{30}{3}=10\) [Ω]
右側の合成抵抗 \(R_2=\cfrac{30}{2}=15\) [Ω]
したがって
\(R=10+15=25\) [Ω] になります。
問題4
合成抵抗 \(R\) を求めよ。
<解答例>
\(R_1\) の合成抵抗から順に求めていきます。
\(R_1=\cfrac{10}{2}=5\) [Ω]
\(R_1=5\) [Ω] に直列の \(5\) [Ω] を足すと \(10\) [Ω]
\(R_2\) は \(10\) [Ω] と \(10\) [Ω] の並列なので \(5\) [Ω] になります。
\(R_2=5\) [Ω] に直列の \(5\) [Ω] を足すと \(10\) [Ω]
\(R_3\) は \(10\) [Ω] と \(10\) [Ω] の並列なので \(5\) [Ω] になります。
したがって
\(R=5\) [Ω] になります。
まとめ
合成抵抗とは、複数の抵抗を1つの抵抗として抵抗値を求めることです。
直列接続の合成抵抗
合成抵抗の求め方は、直列接続の時は単純に足し算をすれば良い。
直列接続の合成抵抗の求め方は、それぞれの抵抗の足し算をすれば良い。
\(R_0=R_1+R_2+R_3+\cdots+R_n\) [Ω]
並列接続の合成抵抗
抵抗の並列接続の合成抵抗は、合成抵抗の逆数がそれぞれの抵抗の逆数の和になります。
並列接続の合成抵抗は、次のようになります。
合成抵抗の逆数=それぞれの抵抗の逆数の和
\(\cfrac{1}{R_0}=\cfrac{1}{R_1}+\cfrac{1}{R_2}+\cfrac{1}{R_3}+\cdots+\cfrac{1}{R_n}\) [Ω]
合成抵抗は \(R_0=\) の式にして、求めます。
和分の積
2つの抵抗の並列接続の合成抵抗は、「和分の積」の公式が使える。
和分の積の公式
\(R_0=\cfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}\) [Ω]
【重要】
★ただし、「和分の積」の公式は、2個のときだけしか使えない。
★並列接続の合成抵抗は、元のそれぞれの抵抗の値より、必ず小さい値になります。
以上で「合成抵抗の求め方と計算例」の説明を終わります。