電界とは、電荷による静電力(クーロン力)が働く空間のことをいい、電場とも呼びます。
電界は、+1クーロンの単位正電荷に働く力を電界の強さという。
電荷から距離r[m]離れた点の電界の強さを求める公式、電界のベクトル合成、電界中にある電荷に働く力を説明します。
電界とは
プラスチックの下敷きを、「こすったり」すると電気を帯びて、髪の毛や糸くずなどを引きつけるような状態になります。目には見えませんが何かが作用しています。
このように、物質が何らかの方法で電気を帯びた状態を「帯電」しているといい、帯電している電気を電荷といいます。
電荷と磁荷の比較
目には見えませんが、帯電体の周りには何かの力が働いています。この力を静電力(クーロン力)といい、静電力(クーロン力)が働く空間のことを「電界」または「電場」といいます。
静電力(クーロン力)は、同種の電荷であれば互いに「反発」し、異種の電荷では互いに「引き合う」という性質があります。
電界の強さ
電界の強さは、\(E\) で表し、単位には、[V/m] を使います。
電界 \(E\) は、その点に +1C(クーロン)の「単位正電荷」を置いたときに、この単位正電荷に働く力の「大きさと方向」で表します。つまり、電界は「ベクトル量」になります。
電界の強さの公式
誘電率 \(ε\) [F/m] の媒質中において、電荷 \(Q\) [C」 の点から \(r\) [m] 離れた 点における
電界の強さ \(E\) [V/m] は次のようになります。
\(E=\cfrac{Q}{4πεr^2}\)\(=k\cfrac{Q}{ε_rr^2}\) [V/m]
\(E≒9×10^9\cfrac{Q}{ε_rr^2}\) [V/m]
\(k=\cfrac{1}{4πε_0}\)\(≒9×10^9\) [N・m2/C2]\(\cdots\)定数
\(ε_0≒8.854×10^{-12}\) [F/m]\(\cdots\)真空の誘電率
\(ε=ε_0ε_r\) [F/m]\(\cdots\)誘電率
\(ε_r\)\(\cdots\)比誘電率
\(ε\cdots\)誘電率 [F/m]
\(ε_0\cdots\)真空の誘電率 [F/m]
\(ε_r\cdots\)比誘電率 真空中や空気中では、\(ε_r=1\) です。
電界の合成
複数の点電荷による P点の電界の強さは、各点電荷によって作られる電界のベクトル和として求めることができます。
電界中の電荷に働く力
電界の強さが \(E\) [V/m] の電界中にある、\(q\) [C] の電荷に働く力は
\(F=qE\) [N] になります。
電界とは電位の傾き
電界とは電位の傾きのことですから、図のような \(d\) [m] の距離の極板間に \(V\) [V] の電位差があるときの電界 \(E\) [V/m] は
\(E=\cfrac{V}{d}\) [V/m] となります。

例えば、10cm はなれた極板間に、100V の電位差があるときの電界 \(E\) は
\(E=\cfrac{V}{d}=\cfrac{100}{0.1}=1000\) [V/m] となります。
●電界は斜面の傾き
電界の強さは、斜面の傾きが大きいか、小さいかによります。
図のように、+1クーロンの電荷が \(+q\) の電荷の近くにあれば傾きは大きくなり、遠くに行けば傾きは小さくなることがわかります。

練習問題
例題1
中心 0 での電界を求める。
<解答>
中心 0 での電界を求める。
左の \(+q\) が中心 0 に作る電界は、\(E=k\cfrac{Q}{r^2}\) [V/m] になります。
\(E=k\cfrac{q}{a^2}\)
右の \(+q\) が中心 0 に作る電界も同じく
\(E=k\cfrac{q}{a^2}\)
電界はベクトルの和になるので、0 になります。
\(k\cfrac{q}{a^2}+(-k\cfrac{q}{a^2})=0\)
例題2
y軸上の P点の電界の強さの合計を求める。

<解答>
y軸上の P点の電界の強さの合計を求める。
y軸上の P点の電界の強さ \(E\) は共に
\(E=k\cfrac{q}{(\sqrt2a)^2}\)
P点の電界の合計はベクトル和になりますので、\(\sqrt2E\) になります。
\(\sqrt2E=kq×\cfrac{\sqrt2}{2a^2}\) になります。
まとめ
1.電界の強さの公式
\(E=\cfrac{Q}{4πεr^2}\)\(=k\cfrac{Q}{ε_rr^2}\) [V/m]
\(E≒9×10^9\cfrac{Q}{ε_rr^2}\) [V/m]
2.電界中の電荷に働く力
\(F=qE\) [N] になります。
3.電界は電位の傾き
\(E=\cfrac{V}{d}\) [V/m] となります。
補足
電荷
電気が流れるとは、電気を持った粒つまり(電荷)を持つ電子が移動することです。この「電荷」の流れが電流になります。
電荷には、正電荷(プラス(+)の電荷)と負電荷(マイナス(-)の電荷)があります。
電荷の記号は \(Q\) または \(q\) を使い、単位はクーロン [C] を使います。
電荷の性質として、同種の電荷間では反発力(斥力)が働き、異種の電荷間では吸引力が働きます。
電荷と磁荷の比較
電荷に関することと、磁荷に関するものを比較してみましょう。
電荷 | 磁荷 | ||
---|---|---|---|
電荷 \(Q\) | \(Q\) [C] | 磁荷 \(m\) | \(m\) [Wb] |
電界 \(E\) | \(E=\cfrac{Q}{4πεr^2}\) [V/m] | 磁界 \(H\) | \(H=\cfrac{m}{4πμr^2}\) [A/m] |
誘電率 \(ε\) | \(ε=ε_0ε_r\) [F/m] | 透磁率 \(μ\) | \(μ=μ_0μ_r\) [H/m] |
\(ε_0\) [F/m] 真空中の誘電率 | \(μ_0\) [H/m] 真空中の透磁率 | ||
\(ε_r\) [F/m] 比誘電率は真空中、空気中は \(ε_r=1\) | \(μ_r\) [H/m] 比透磁率は真空中、空気中は \(μ_r=1\) | ||
電束 | \(Q\) [C]=\(Q\) 本の電束 1 [C] の正電荷から 1本の電束 |
磁束 \(\phi\) | \(m\) [Wb]\(=m\) 本の磁束 |
電束密度 \(D\) | \(D=\cfrac{Q}{4πr^2}\) [C/m2] | 磁束密度 \(B\) | \(B=μH\) [T] |
\(D=εE\) [C/m2] | |||
クーロンの法則(静電気) | \(F=\cfrac{1}{4πε_0}・\cfrac{Q_1Q_2}{ε_rr^2}\) [N] | クーロンの法則(磁気) | \(F=\cfrac{1}{4πμ_0}・\cfrac{Q_1Q_2}{μ_rr^2}\) [N] |
\(F=9×10^9×\cfrac{Q_1Q_2}{ε_rr^2}\) [N] | \(F=6.33×10^4×\cfrac{Q_1Q_2}{μ_rr^2}\) [N] | ||
\(k=\cfrac{1}{4πε_0}≒9×10^9\) [N・m2/C2] | \(k=\cfrac{1}{4πμ_0}=6.33×10^4\) [N・m2/Wb2] | ||
電界中 \(E\) で働く力 | \(F=qE\) [N] | 磁界中 \(H\) で働く力 | \(F=mH\) [N] |
以上で「電界とは」の説明を終わります。