次の図は、三相交流電源と負荷の接続を、デルタ結線(Δ-Δ結線)したものです。

端子 \(ab、bc、ca\) の各相を 相 といい、各相の起電力 \(E_a、E_b、E_c\) を 相電圧 といいます。
デルタ結線では
線電流 \(=\sqrt3 ×\) 相電流 になります。
各相の起電力 \(E_a、E_b、E_c\) は、それぞれの線間電圧 \(\dot{V_{ab}}、\dot{V_{bc}}、\dot{V_{ca}}\) と等しくなります。
また、各相の起電力は、互いに \(\cfrac{2π}{3}\quad\rm[rad]\) の位相差があります。
三相交流回路のデルタ結線は 「Δ結線」 または 「三角結線」 などと呼ばれます。
デルタ結線の線間電圧と相電圧の関係や線電流と相電流の関係など、また、デルタ結線の表わし方などについて説明をします。
目次
デルタ結線のまとめ

デルタ結線の線電流は、次のようになります。
\(\dot{I_a}=\dot{I_{ab}}-\dot{I_{ca}}\quad\rm[A]\)
\(\dot{I_b}=\dot{I_{bc}}-\dot{I_{ab}}\quad\rm[A]\)
\(\dot{I_c}=\dot{I_{ca}}-\dot{I_{bc}}\quad\rm[A]\)
■ デルタ結線の線電流と相電流の関係
線電流 \(=\sqrt{3}\) × 相電流 \(\quad\rm[A]\)
線電流は相電流より、位相が \(\cfrac{π}{6}\) 遅れる。
相電流は線電流より、位相が \(\cfrac{π}{6}\) 進むと見ることができます。
デルタ結線の線間電圧と相電圧の関係を見ると、線間電圧と相電圧は等しくなります。
デルタ結線の相電流と線電流の関係
図のように、負荷のインピーダンス \(\dot{Z}\) を三角形に接続したものを、デルタ結線といいます。
デルタ結線では、負荷も相電圧と線間電圧は大きさが等しくなります。

■ 各接合点 \(a、b、c\) 点 の 線電流と相電流 の関係を調べます
線電流を求めるには、キルヒホッフの第1法則を使います。
線電流 \(\dot{I_a}、\dot{I_b}、\dot{I_c}\) は 電源から負荷に向かう方向を正 として考えます。
\(a\) 点\(\cdots\dot{I_a}+\dot{I_{ca}}=\dot{I_{ab}}\)
\(\qquad\dot{I_a}=\dot{I_{ab}}-\dot{I_{ca}}\)
\(b\) 点\(\cdots\dot{I_b}+\dot{I_{ab}}=\dot{I_{bc}}\)
\(\qquad\dot{I_b}=\dot{I_{bc}}-\dot{I_{ab}}\)
\(c\) 点\(\cdots\dot{I_c}+\dot{I_{bc}}=\dot{I_{ca}}\)
\(\qquad\dot{I_c}=\dot{I_{ca}}-\dot{I_{bc}}\)
となります。

デルタ結線のベクトル図から線電流を求める
1. 三角形ABO は、辺AO と 辺AB が相電流 \(\dot{I_{ab}}\) と \(-\dot{I_{ca}}\) なので、大きさが等しく、二等辺三角形になります。
2. P点は底辺BO を二等分します。 \(PO=\cfrac{1}{2}I_a\) になります。
3. 直角三角形APO で、∠AOPは \(\cfrac{π}{6}\quad\rm[rad]\) になります。

したがって、線電流は次のようになります。
\(\cos\cfrac{π}{6}=\cfrac{PO}{AO}=\cfrac{\cfrac{1}{2}I_a}{I_{ab}}\)
\(I_a=2I_{ab}cos\cfrac{π}{6}\)=\(2×I_{ab}×\cfrac{\sqrt{3}}{2}\)=\(\sqrt{3}I_{ab}\quad\rm[A]\)
対称三相交流であれば、各相電流は等しくなります。
相電流を \(I_p\) とすると \(I_p=I_{ab}=I_{bc}=I_{ca}\) になります。
\(I_a=\sqrt{3}{I_p}\quad\rm[A]\)
\(I_b=\sqrt{3}{I_p}\quad\rm[A]\)
\(I_c=\sqrt{3}{I_p}\quad\rm[A]\)
線電流 \(=\sqrt{3}\) × 相電流 になります。
デルタ結線の相電流と線電流のベクトル図
デルタ結線の線電流は相電流より \(\cfrac{π}{6}\quad\rm[rad]\) 遅れる。
デルタ結線の線電流 \(\dot{I_a}\) は \(\dot{I_{ab}}-\dot{I_{ca}}\) になります。
図のように、ベクトル \(\dot{I_{ca}}\) と同じ大きさで方向が反対のベクトル \(\dot{-I_{ca}}\) を描いて、ベクトル合成をすれば求めることができます。
\(\dot{I_{ab}}\) と \(\dot{-I_{ca}}\) の位相差は \(\cfrac{π}{3}\quad\rm[rad]\) ですから、線電流 \(\dot{I_a}\) は相電流 \(\dot{I_{ab}}\) より、その半分の \(\cfrac{π}{6}\quad\rm[rad]\) 遅れになります。

デルタ結線の線電流は
\(\dot{I_a}=\dot{I_{ab}}-\dot{I_{ca}}\)
\(\dot{I_b}=\dot{I_{bc}}-\dot{I_{ab}}\)
\(\dot{I_c}=\dot{I_{ca}}-\dot{I_{bc}}\)
ですから、\(\dot{I_{ab}}\) を基準にしたベクトル図が、次の図になります。
線電流 \(\dot{I_a}、\dot{I_b}、\dot{I_c}\) は大きさが同じで互いに \(\cfrac{2π}{3}\) の位相差がある対称三相交流です。
また、線電流 \(\dot{I_a}、\dot{I_b}、\dot{I_c}\) が相電流より、それぞれ \(\cfrac{π}{6}\) 遅れています。

デルタ結線の線電流を記号法で求める
各相の線電流は
\(\dot{I_a}=\dot{I_{ab}}-\dot{I_{ca}}\)\(=I-I(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2})\)\(=I(\cfrac{3}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2})\quad\rm[A]\)
\(\dot{I_b}=\dot{I_{bc}}-\dot{I_{ab}}\)\(=I(-\cfrac{1}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2})-I\)\(=I(-\cfrac{3}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2})\quad\rm[A]\)
\(\dot{I_c}=\dot{I_{ca}}-\dot{I_{bc}}\)\(=I(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2})-I(-\cfrac{1}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2})\)\(=j\sqrt{3}I\quad\rm[A]\)

記号法によりデルタ結線の閉回路の起電力の和は0(ゼロ)を求める
三相交流のY-Y結線の所で、大きさが等しい対称三相起電力の和が0(ゼロ)になることを三角関数で説明しました.
ここでは、記号法により0(ゼロ)になることを説明します。

\(\dot{E_a}=E\quad\rm[V]\)
\(\dot{E_b}=E\left(-\cfrac{1}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\quad\rm[V]\)
\(\dot{E_c}=E\left(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\quad\rm[V]\)
従って
\(\dot{E_a}+\dot{E_b}+\dot{E_c}\)\(=E+E\left(-\cfrac{1}{2}-\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)+E\left(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)=0\)
となります。
このため、電源の対称三相起電力を直列にしたデルタ結線の閉回路には、循環電流は流れません。

デルタ結線の相電流の直交座標表示
デルタ結線の相電流は互いに \(\cfrac{2π}{3}\quad\rm[rad]\) の位相差があり、電流の大きさ \(I\) は等しいので、相電流 \(\dot{I_{ab}}\) を基準にすると次のようになります。
\(I_{ab}=I\quad\rm[A]\)
\(I_{bc}=I\left(-\cfrac{1}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\quad\rm[A]\)
\(I_{ca}=I\left(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\quad\rm[A]\)
練習問題
線間電圧 \(100V\) の三相3線式回路において、対称負荷 \(Z=16+j12\quad\rm[Ω]\) を デルタ接続にしてあります。
相電流と線電流を求めよ。
解 答
問題文を図に表すと次のようになります。

デルタ結線では、線電流 \(I\) と相電流 \(I_a\) の関係は
\(I=\sqrt{3}I_a\quad\rm[A]\) になります。
相電流は
\(|I_a|=\cfrac{100}{\sqrt{16^2+12^2}}\)\(=\cfrac{100}{20}=5\quad\rm[A]\)
線電流は
\(|I|=\sqrt{3}×I_a=\sqrt{3}×5≒8.66\quad\rm[A]\) になります。
以上で「三相交流のデルタ結線」の説明を終わります。