- デルタ結線の特徴
- デルタ結線の相電流と線電流の関係
- デルタ結線の線電流の求め方
- デルタ結線の閉回路の起電力の和は0(ゼロ)になる
- 記号法による表示
について説明しています。
デルタ結線の特徴
図は三相交流電源と負荷の接続を デルタ結線(Δ-Δ結線) にしたものです。
相電圧と線間電圧
- 端子 \(ab、bc、ca\) の各相を 相 といいます。
- 各相の起電力 \(E_a、E_b、E_c\) を 相電圧 といいます。
- 各線間の電圧 \(V_{ab}、V_{bc}、V_{ca}\) を 線間電圧 といいます。
相電流と線電流
- 各相を流れる電流 \(I_{ab}、I_{bc}、I_{ca}\) を 相電流 といいます。
- 各線を流れる電流 \(I_a、I_b、I_c\) を 線電流 といいます。
■ 重要
デルタ結線では
線電流 (=\sqrt3 ×) 相電流 になります。
相電圧=線間電圧 になります。
線電流 \(I_a、I_b、I_c\) は 相電流 \(I_{ab}、I_{bc}、I_{ca}\) の ルート3倍になります。
線間電圧 \(V_{ab}、V_{bc}、V_{ca}\) は 相電圧 \(E_a、E_b、E_c\) と等しくなります。
図の中の 電圧の矢印の向き は、電位の高さを表していて 矢印の先のほうが電位が高く なります。
また、各相の起電力は、互いに \(\cfrac{2π}{3}\) [rad] ラジアン の位相差があります。
デルタ結線の相電流と線電流の関係
図のように、負荷のインピーダンス \(Z\) を三角形に接続したものを、デルタ結線といいます。
デルタ結線では、相電圧と線間電圧は等しくなります。
各接合点 \(a、b、c\) 点 の 線電流と相電流 の関係を調べます
線電流を求めるには、キルヒホッフの第1法則を使います。
線電流 \(I_a、I_b、I_c\) は 電源から負荷に向かう方向を正 として考えます。
\(a\) 点
\(I_a+I_{ca}=I_{ab}\)
\(I_a=I_{ab}-I_{ca}\)
\(b\) 点
\(I_b+I_{ab}=I_{bc}\)
\(I_b=I_{bc}-I_{ab}\)
\(c\) 点
\(I_c+I_{bc}=I_{ca}\)
\(I_c=I_{ca}-I_{bc}\) となります。
デルタ結線の線電流の求め方
デルタ結線の線電流 \(I_a\) は \(I_{ab}-I_{ca}\) になります。
図のように、ベクトル \(I_{ab}\) とベクトル \(-I_{ca}\) を合成をすれば線電流 \(I_a\) の ベクトル を求めることができます。
\(-I_{ca}\) は \(I_{ca}\) と同じ大きさで、方向が反対のベクトルになります。
\(I_{ab}\) と \(-I_{ca}\) の位相差は \(\cfrac{π}{3}\) ですから、線電流 \(I_a\) は相電流 \(I_{ab}\) より、その半分の \(\cfrac{π}{6}\) 遅れになります。
デルタ結線の線電流は
\(I_a=I_{ab}-I_{ca}\)
\(I_b=I_{bc}-I_{ab}\)
\(I_c=I_{ca}-I_{bc}\)
\(I_{ab}\) を基準にしたベクトル図
線電流 \(I_a、I_b、I_c\) は大きさが同じで互いに \(\cfrac{2π}{3}\) の 位相差 があります。
線電流 は 相電流 より \(\cfrac{π}{6}\) 遅れています。
デルタ結線の線電流は相電流のルート3倍になる
ベクトル図から デルタ結線の線電流は相電流のルート3倍 になることを求めます。
- 三角形ABO は、辺AO と 辺AB が相電流 \(I_{ab}\) と \(-I_{ca}\) なので、大きさが等しい「二等辺三角形」になります。
- P点は底辺BO を二等分します。 \(PO=\cfrac{1}{2}I_a\) になります。
辺POの長さは
\(PO=\cfrac{1}{2}I_a\) になります。 - 直角三角形APO で、∠AOPは \(\cfrac{π}{6}\) ですから
\(\cos\cfrac{π}{6}\) は、次のようになります。
\(\cos\cfrac{π}{6}=\cfrac{PO}{AO}=\cfrac{\cfrac{1}{2}I_a}{I_{ab}}\cdots(1)\) - 式(1)を変形して \(I_a=\) にすると
\(I_a=2I_{ab}cos\cfrac{π}{6}\)
\(=2×I_{ab}×\cfrac{\sqrt{3}}{2}\)\(=\sqrt{3}I_{ab}\)
\(I_a=\sqrt{3}I_{ab}\) になります。
■ メモ
三角関数の値 \(\cos\cfrac{π}{6}=\cfrac{\sqrt{3}}{2}\)
対称三相交流であれば、各相電流は等しくなります。
相電流を \(I_p\) とすると \(I_p=I_{ab}=I_{bc}=I_{ca}\) になります。
\(I_a=\sqrt{3}{I_p}\) [A]
\(I_b=\sqrt{3}{I_p}\) [A]
\(I_c=\sqrt{3}{I_p}\) [A]
デルタ結線の線電流は
線電流 \(=\sqrt{3}\) × 相電流 になります。
デルタ結線の閉回路の起電力の和は0(ゼロ)になる
大きさが等しい対称三相起電力の和が0(ゼロ)になることを
記号法により0(ゼロ)になることを説明します。
\(E_a=E\) [V]
\(E_b\)\(=E\left(-\cfrac{1}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\) [V]
\(E_c\)\(=E\left(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\) [V]
従って
\(E_a+E_b+E_c\)\(=E+E\left(-\cfrac{1}{2}-\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\)\(+E\left(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)=0\)
となります。
このため、電源の対称三相起電力を直列にしたデルタ結線の閉回路には、循環電流は流れません。
デルタ結線の相電流と線電流を記号法で求める
デルタ結線の相電流の大きさを \(I\) とすると、各相電流は次のようになります。
\(I_{ab}=I\)
\(I_{bc}=I\left(-\cfrac{1}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\)
\(I_{ca}=I\left(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2}\right)\)
デルタ結線の各相の線電流は、次のようになります。
\(I_a=I_{ab}-I_{ca}\)
\(=I-I(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2})\)
\(=I(\cfrac{3}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2})\)
\(I_b=I_{bc}-I_{ab}\)
\(=I(-\cfrac{1}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2})-I\)
\(=I(-\cfrac{3}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2})\)
\(I_c=I_{ca}-I_{bc}\)
\(=I(-\cfrac{1}{2}+j\cfrac{\sqrt{3}}{2})-I(-\cfrac{1}{2}-j\cfrac{\sqrt{3}}{2})\)
\(=j\sqrt{3}I\)
デルタ結線のまとめ
デルタ結線の線電流は、次のようになります。
\(I_a=I_{ab}-I_{ca}\)
\(I_b=I_{bc}-I_{ab}\)
\(I_c=I_{ca}-I_{bc}\)
■ デルタ結線の特徴
線電流 \(=\sqrt{3}\) × 相電流\) [A]
線電流は相電流より、位相が \(\cfrac{π}{6}\) [rad] 遅れる。
相電流は線電流より、位相が \(\cfrac{π}{6}\) [rad] 進むと見ることもできます。
また 線間電圧=相電圧 になります。
練習問題
問題1
線間電圧 \(100\) [V] の三相3線式回路において、対称負荷 \(Z=16+j12\) [Ω] を デルタ接続にしてあります。
相電流と線電流を求めよ。
<解答例>
問題文を図に表すと次のようになります。
デルタ結線では、線電流 \(I\) と相電流 \(I_a\) の関係は
\(I=\sqrt{3}I_a\) [A] になります。
相電流は
\(|I_a|=\cfrac{100}{\sqrt{16^2+12^2}}\)\(=\cfrac{100}{20}=5\) [A]
線電流は
\(|I|=\sqrt{3}×I_a=\sqrt{3}×5≒8.66\) [A] になります。