フェランチ効果は 受電端の電圧 が 送電端の電圧より高くなる現象 のことです。
フェランチ効果 は、送電線が持つ抵抗とインダクタンスと対地静電容量によって、負荷の大きさが変動することにより発生するものです。
ここでは、フェランチ効果の原因と対策について説明します。
フェランチ効果の名前は、発見者のセバスチャン・フェランティに由来します。
送電路のモデルを考える
通常であれば、送電線路の内部にあるわずかな抵抗によって、電流が流れると受電端の電圧が下がります。
そのため 、送電端電圧 > 受電端電圧 となるのが普通です。
つまり、フェランチ効果という現象は起こらないのです。
しかし、電線路の条件によっては、 送電端電圧 < 受電端電圧 となることがあります。
このような現象を フェランチ効果 と呼んでいます。
図は送電路のモデルです。
送電路には、抵抗分とリアクタンスが存在します。
リアクタンスには、送電路の インダクタンス と 対地静電容量 が含まれます。
電力系統の場合、需要家設備の負荷はモーターに代表されるように、誘導性負荷が主体になっています。
そのため、一般に電流は電圧に対して 遅れ の状態になっています。
遅れの力率を改善するために、容量性のコンデンサを使います。
この力率改善用のコンデンサを 電力用コンデンサ あるいは 進相コンデンサ といいます。
遅れ力率のベクトル図
■ フェランチ効果が発生していないとき
フェランチ効果が発生していない時の、ベクトル図は次のようになります。
- 遅れ力率の場合は、受電端電圧 \(V_2\) に対して遅れ位相 \(θ\) の電流 \(I\) が流れています。
- 抵抗の電圧降下 \(IR\) は、電流 \(I\) と同相になります。
- リアクタンスの電圧降下 \(IX\) は、電流 \(I\) より 90 度進みます。
(遅れ力率ですから、リアクタンス分は誘導性になりますので、電圧は電流より 90 度進みます。) - 送電端電圧 \(V_1\) は、この電圧降下と \(V_2\) の合成電圧になります。
- 図から分かるように、\(V_1>V_2\) になります。
■ フェランチ効果が発生するとき
受電側の負荷が大きく変動するとフェランチ効果が発生します。
フェランチ効果は受電端の電圧が送電端の電圧より高くなる現象のことです。
高圧の送電線路には抵抗とインダクタンスと対地静電容量があります。
フェランチ効果は負荷側のインピーダンスが変動することにより発生します。
需要家の長期休暇などの時は負荷が大きく変動します。
このような時にフェランチ効果という現象が発生します。
進み力率のベクトル図
■ フェランチ効果が発生しているとき
フェランチ効果が発生している時の、ベクトル図は次のようになります。
- 進み力率の場合は、受電端電圧 \(V_2\) に対して進み位相 \(θ\) の電流 \(I\) が流れています。
- 抵抗の電圧降下 \(IR\) は、電流 \(I\) と同相になります。
- リアクタンスの電圧降下 \(IX\) は、電流 \(I\) より 90 度遅れます。
(進み力率ですから、リアクタンス分は容量性になりますので、電流は電圧より 90 度進みます。) - 送電端電圧 \(V_1\) は、この電圧降下と \(V_2\) の合成電圧になります。
- 図から分かるように、\(V_1< V_2\) になります。
これがフェランチ効果です。
■ フェランチ効果の原因になる負荷変動による電圧と電流の関係
通常の負荷の時は受電端電圧に対して、電流は遅れになるのが一般的です。
しかし、軽負荷の場合は受電端電圧に対して、電流が進み電流になることがあります。
対地静電容量などの容量性リアクタンスが大きいと進み電流になってしまうことになります。
このような状態では対地静電容量が大きく影響してきます。
進相コンデンサなどが通常の使用状況になっていると、進み電流が流れることによって、 フェランチ効果 が起こることになります。
フェランチ効果の弊害と抑制方法
フェランチ効果が問題になるのは、高圧系統の送電線路であって、家庭で使うような低圧電路では問題になりません。
- 変圧器やモーターが過励磁になる問題
- 絶縁物の劣化が大きく加速されること
- 進み電流と電源インピーダンスのリアクトルによる高調波問題
などがあります。
送電側から見るた場合のフェランチ効果の影響
フェランチ効果で力率の低下により、無効電力が発生しますので、この分の電力を送電側では送らなければなりません。
無効電力は全体として消費されませんが、その分の電力は送る必要があるので送電側としては負担になります。
フェランチ効果の抑制方法
■ 軽負荷時の進相コンデンサ開放
企業などが一斉に休暇を取るような場合には、電力会社から需要家に対して、進相コンデンサの開放を依頼することがあります。
進相コンデンサとは、交流回路の力率を改善するために挿入するコンデンサのことです。
一般的に、交流回路は電動機などの誘導負荷が多く使用されるので力率が遅れになります。
そのため、進相コンデンサを挿入することで力率を改善しています。
コンデンサは電流が電圧に対して、90°進む性質があるので電動機などの遅れ電流を打ち消すことができます。
その結果として力率が改善できるわけです。
これはフェランチ効果によって、異常電圧が発生しないようにするためのものです。
■ 分路リアクトルを投入
負荷が軽い時に、電路に並列に分路リアクトルというものを入れて、コンデンサの成分を打ち消す役割があります。
このリアクトルを入れることによって遅れ電流を発生させて、進み電流を打ち消して力率を改善しフェランチ効果を抑制しようというものです。
以上で「フェランチ効果」の説明を終わります。