交流電力と力率




この記事は次の項目について書いています。(この記事は2019/7/28に更新されました。)
• 直流電力と交流電力の違い
• 有効電力・無効電力・皮相電力の関係と説明
• 力率の求め方と遅れ力率と進み力率

直流電力と交流電力の違い

直流電力

直流回路の電力は、単純に電圧と電流の積になります。
負荷の電圧と回路に流れた電流だけで、その他の要素はありません。
そして、電源の電圧は一定で、回路を流れる電流も負荷に応じて一定です。

交流電力

交流電力は直流電力と違って、考慮する要素があります。
電圧、電流には実効値を使います。
電圧と電流には位相差があリます。
電力を消費する割合を示す力率などがあります。

交流電力 \(P\) は、電圧と電流の実効値を \(V、I\)、その間の位相差を \(θ\) とすると
次の式で表されます。
\(P=VI\cosθ\quad[\rm W]\)

交流電力には、有効電力 \(P\) 、無効電力 \(Q\) 、皮相電力 \(S\) がありますので、次にそれぞれについて説明します。

有効電力・無効電力・皮相電力の関係と説明

有効電力 \(P\)・無効電力 \(Q\)・皮相電力 \(S\) と位相 \(θ\) の関係は、次の図のようになります。

有効電力・無効電力・皮相電力の関係を数式で表すと、次のようになります。
皮相電力2=有効電力2 + 無効電力2

皮相電力\(=\sqrt{(有効電力)^2+(無効電力)^2}\)=\(\sqrt{(VI\cosθ)^2+(VI\sinθ)^2}\)

\((\cos^2θ+\sin^2θ)=1\) なので、次のようになります。
皮相電力\(=\sqrt{(VI)^2(\cos^2θ+\sin^2θ)}\)=\(\sqrt{(VI)^2}=VI\quad[\rm VA]\) 

有効電力とは

有効電力は \(P\) で表し単位に \([W]\) ワット を使います。
\(P=VI\cosθ\quad[\rm W]\) 

電力は \(P=VI\cosθ\) で表されますが、これは実際に負荷で消費される電力(消費電力)のことで「有効電力」といいます。
単に電力と言ったら、この有効電力のことをいいます。

\(\cosθ\) のことを 力率(power factor) といいます。
力率=\(\cfrac{有効電力}{皮相電力}=\cfrac{P}{VI}\) で表されます。

\(\cos0°=1, \cos90°=0\) のように 1~0 の値なので、普通は 100倍してパーセントで表わします。
力率(%)=\(=\cfrac{P}{VI}×100\quad[%]\) 

力率
力率は、\(VI\)(皮相電力)が有効電力 \(P\) になる割合を表しています。

無効電力とは

電圧と 90° の位相差のある電流 \(I\sinθ\) と電圧 \(V\) の積は、無効電力といいます。
この無効電力は実際に負荷で電気エネルギーとして消費されない電力のことです。

無効電力は \(Q\) で表し単位に \([\rm var]\) バール を使います。
\(Q=VI\sinθ\quad[\rm var]\) 

\(Q=VI\sqrt{1-\cos^2θ}\quad[\rm var]\)

負荷に接続されている電動機(モーター)などの、誘導性リアクタンスや静電容量による容量性リアクタンスにより発生します。

皮相電力とは

単に交流の電圧 \(V\) と電流 \(I\) の積を皮相電力と言います。電源から送り出される電力です。
皮相電力は \(S\) で表し単位に \([\rm VA]\) ボルトアンペア を使います。
\(S=VI\quad[\rm VA]\) 

力率とは

図のような交流回路があります。
交流電源に 20[W] の負荷を接続した時の、実際の電力を電力計で測定したところ 25[W] の消費電力でした。

電力の関係を図で示すと、次のようになります。

有効電力 \(P\) [W]\(\cdots\)負荷で実際に消費される電力です。
無効電力 \(Q\) [var]\(\cdots\)電力を消費しない分の電力です。
皮相電力 \(S\) [VA]\(\cdots\)電源から送られる電力です。

このように、送られた電力がすべて、負荷で消費されるわけではありません。
上の例なら、\(25-20=5\) となりそうだが、交流電力はその様になりません。
有効電力 \(P\)・無効電力 \(Q\)・皮相電力 \(S\) には、次のような関係があります。

\(S^2=P^2+Q^2\) という関係があるので
\(25^2=20^2+Q^2\) から

\(Q=\sqrt{25^2-20^2}=15\) になります。

したがって、上の回路の力率は
力率=\(\cfrac{有効電力}{皮相電力}=\cfrac{20}{25}=0.8\) で表されます。

力率の計算式
力率は、皮相電力 \(S\) が有効電力 \(P\) になる割合を表しています。

有効電力は
\(P=S\cosθ=VI\cosθ\) [W] ですから

\(\cosθ=\cfrac{P}{S}\) です。

\(\cosθ\) のことを力率(power factor)といいます。

力率=\(\cfrac{有効電力}{皮相電力}=\cfrac{P}{S}\)\(=\cfrac{P}{\sqrt{P^2+Q^2}}\) で表されます。

\(\cos0°=1, \cos90°=0\) のように 1~0 の値なので、普通は 100倍してパーセントで表わします。

遅れ力率と進み力率の違い

位相でもそうですが、遅れと進みということがとても分かりづらいものです。基準のとり方によると遅れと見ることも、進みと見ることもできるときがあるからです。

力率についても遅れと進みがあり、自分自身でもとてもややこしい思いをしていました。次のように考えると分かりやすいと思います。

遅れ力率

遅れ力率のときは、無効電力 \(Q\) が正になります。有効電力 \(P\) は正になります。
\(\cfrac{Q}{P}>0\) なので遅れ力率になります。

これは誘導リアクタンスが容量リアクタンスより大きいことを見てもわかります。

進み力率

進み力率のときは、無効電力 \(Q\) が負になります。有効電力 \(P\) は正になります。
\(\cfrac{Q}{P}<0\) なので進み力率になります。

これは誘導リアクタンスが容量リアクタンスより小さいことを見てもわかります。

計算例

図のような、抵抗とコイルの直列回路において、力率と電力を求めよ。


\(Z=8+j6\)

\(Z=|Z|=\sqrt{8^2+6^2}=\sqrt{64+36}=\sqrt{100}=10\) [Ω]

\(I=\cfrac{E}{Z}=\cfrac{100}{10}=10\) [A]

力率 \(\cosθ=\cfrac{R}{Z}=\cfrac{8}{10}\)=0.8→80 [%]

電力 \(P=EI\cosθ=100×10×0.8\)=800 [W]

参考

RL回路の電力

直流回路の電力は、電圧と電流の積 \(VI\) で表すことができます。

しかし、交流回路の場合は、電圧と電流が時間によって変わりますので、瞬時の電力 \(p\) は電圧と電流の積 \(ei\) で表すことが出来ます。

この関係を示したものが下図の(b)で、この瞬時電力を1周期について平均したものが電力 \(p\) となります。

単位は [W] ワットを用います。

図(b)において、電力を求めると

\(e=\sqrt2V\sinωt\) [V]

\(i=\sqrt2I\sin(ωt-θ)\) [A]

\(p=ei=\sqrt2V\sinωt×\sqrt2I\sin(ωt-θ)\)=\(2VI\sinωt×\sin(ωt-θ)\)

加法定理
\(\sinα\sinβ\)=\(\cfrac{1}{2}(\cos(α-β)-\cos(α+β))\)

上の式を加法定理で展開すると

\(p=2VI×\cfrac{1}{2}(\cos(ωt-ωt+θ)\)-\(\cos(ωt+ωt-θ))\)

\(p=VI\cosθ-VI\cos(2ωt-θ)\)

\(p\) の平均が電力 \(P\) になるので

\(P=pの平均=VI\cosθの平均\)-\(VI\cos(2ωt-θ)の平均\)

ここで、
\(VI\cosθの平均=VI\cosθ\) となり

\(VI\cos(2ωt-θ)の平均=0\) なので

\(\therefore P=VI\cosθ\) [W]

LやCだけの場合の電力

誘導性リアクタンスや容量性リアクタンスだけの回路の電力を波形で示すと 下図のようになります。

電圧 \(e\) と電流 \(i\) の位相差が \(π/2\) のときは、

\(ei\) の積 \(p\) は1/4周期ごとに

正の電力 ①、② と負の電力 ③、④ がくり返されますので、電力 \(P\) はゼロになります。

つまり、L(インダクタンス)やC(コンデンサ)は、電力を消費していないことになります。

ところで、正の電力とは発電所から送られる電力です。

では、負の電力とは何でしょう。

これは発電所の方に「送り返す電力」を示しています。

図の(a)、(b)で言うと ①、② で消費した電力を ③、④ で電源側に送り返していることになります。

以上で「交流電力と力率」の説明を終わります。




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