コイルに流れる電流が90°遅れるわけ

★ 三角関数で誘導起電力と電流の位相を計算します。

★ 位相の進みと遅れは基準にするもので違う。

三角関数で誘導起電力と電流の位相を計算する

■ 電流を基準に、起電力の大きさを考えます。

コイルに流れる電流の瞬時値は

\(i=I_m\sinωt\quad\rm[A]\) です。

コイルに誘導される、起電力は ファラデーの法則 により、電流の変化率に比例します。

\(v=L\cfrac{Δi}{Δt}\quad\rm[V]\cdots(1)\)

■ 電流の変化率

図において、コイルに流れる電流の瞬時値 \(i_1\) は

\(i_1=I_m\sinωt \cdots(2)\)

時間が \(Δt\quad\rm[S]\) 経過したときの電流 \(i_2\) は

\(i_2=I_m\sin(ωt+ωΔt) \cdots(3)\)

電流の変化分 \(Δi\) は

\(Δi=i_2-i_1 \cdots(4)\)

式(4)に式(2)と式(3)を代入します。

\(Δi=i_2-i_1 \cdots(4)\)

\(Δi=I_m\sin(ωt+ωΔt)-I_m\sinωt\)\(\cdots(5)\)

式(5)の \(\sin(ωt+ωΔt)\) を三角関数の加法定理で展開すると

加法定理 \(\sin(α+β)=\sinα\cosβ+\cosα\sinβ\) ですから

\(\sin(ωt+ωΔt)\)\(=\sinωt\cosωΔt+\cosωt\sinωΔt\)\(\cdots(6)\)

ここで、\(Δt\) が非常に小さい時間の場合は

\(\cosωΔt≒\cos0=1\)

\(\sinωΔt≒ωΔt\) になります。

これを、式(6)に代入します。

\(\sin(ωt+ωΔt)\)\(≒\sinωt×1+\cosωt×ωΔt\)

\(\sin(ωt+ωΔt)\)\(≒\sinωt+\cosωtωΔt\)\(\cdots(7)\)

式(7)を式(5)に代入すると、次のようになります。

\(Δi=I_m\sin(ωt+ωΔt)-I_m\sinωt\)\(\cdots(5)\)

\(Δi=I_m(\sinωt+\cosωtωΔt)-I_m\sinωt\)

\(Δi=I_m\sinωt+I_m\cosωtωΔt-I_m\sinωt\)

\(Δi=ωΔtI_m\cosωt\quad\rm[A]\)\(\cdots(8)\)

初めの誘導起電力の式(1)に式(8)を代入すると

\(v=L\cfrac{Δi}{Δt}\)\(\cdots(1)\)

\(v=L\cfrac{ωΔtI_m\cosωt}{Δt}\)

\(v=ωLI_m\cosωt\quad\rm[V]\)\(\cdots(9)\)

三角関数の公式から、\(cosθ=sin(θ+\cfrac{π}{2})\) なので、式(9)は

\(v=ωLI_m\sin(ωt+\cfrac{π}{2})\quad\rm[V]\)\(\cdots(10)\)

式(10)を見れば分かる通り、誘導起電力 \(v\) は電流 \(i=I_m\sinωt\) より

位相が \(\cfrac{π}{2}\) [rad] 進んで います。

逆にいえば、電流 \(i\) は電圧 \(v\) より位相が \(\cfrac{π}{2}\) [rad] 遅れて いることになります。

■ 誘導される起電力 \(v\) は電源電圧 \(e\) と釣り合うことになります。

非常に小さい角度の三角関数

いま、図のような半径1 の円を考えるたとき、角度 \(θ\) ラジアン に対する、円弧の長さは \(θ\) です。
\(\sinθ\) は 赤線の長さ、\(\cosθ\) は 青線の長さ になる。

従って、角度 θ の値が 0(ゼロ)に近づいて行くと

\(θ→0\) のとき \(\sinθ→θ\) (赤線の長さは、円弧の長さに近づいて行く)

\(\cosθ→1\) 青線の長さは、円の半径の1 に近づいて行く)

\(\tanθ→θ\) \((\tanθ=\cfrac{\sinθ}{\cosθ}=\cfrac{θ}{1}=θ)\)

\(\cosωΔt≒\cos0=1\)

\(\sinωΔt≒ωΔt\)

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以上で「コイルに流れる電流が90°遅れるわけ」の説明を終わります。