キルヒホッフの法則

キルヒホッフの法則は オームの法則 だけでは、解くことができない複雑な回路を解く場合の法則です。

キルヒホッフの法則には 第1法則(電流に関する法則)と第2法則(電圧に関する法則) があります。

キルヒホッフの法則の概要

■ キルヒホッフの第1法則

電気回路の任意の分岐点において 流入する電流の和は流出する電流の和に等しい。

★ 図1で キルヒホッフの第1法則 流入する電流=流出する電流 を説明します。

★ \(20\) [Ω] の抵抗に流れる電流が \(3\) [A] であることはすぐに分かります。
回路を流れる電流 \(5\) [A] が \(2\) [A] と \(I\) [A] に分流しているので
\(I=3\) [A] になります。

キルヒホッフの第1法則は ごく当たり前のことを言っているだけです。
ある分岐点で見た時 流れ込む電流の和は流れ出る電流の和 に等しいというだけのことです。

■ キルヒホッフの第1法則の例題

例題1

キルヒホッフの第1法則により
流入する電流の和=流出する電流の和 なので
\(15+5=8+I\) から
\(I=12\) [A]

例題2

キルヒホッフの第1法則により
流入する電流の和=流出する電流の和 なので
\(I+5+3=2I+1\) から
\(I=7\) [A]

■ キルヒホッフの第2法則

電気回路の任意の閉回路における 起電力の和は電圧降下の和 に等しい。

★ 図2の回路で 起電力と電圧降下 の関係を示します。
図1の回路の形を少し変形します。

起電力\(\cdots 110\) [V] 
\(10\) [Ω] の電圧降下\(\cdots\)オームの法則から \(10×5=50\) [V] 
\(20\) [Ω] の電圧降下\(\cdots\)オームの法則から \(20×3=60\) [V] 
\(30\) [Ω] の電圧降下\(\cdots\)オームの法則から \(30×2=60\) [V] 
起電力の和=電圧降下の和 から
\(110=50+60\) [V] 

\(20\) [Ω] と \(30\) [Ω] の電圧降下 \(V\cdots\)キルヒホッフの第2法則 から
起電力の和=電圧降下の和 なので
\(110=V+50\)
\(V=60\) [V] になります。

キルヒホッフの法則の使い方

★ キルヒホッフの法則で問題をどのように、解くのかを説明します。

問題 それぞれの抵抗に流れる電流を求めよ。
解析手順

★ 任意の分岐点 P において キルヒホッフの第1法則 を使います。
電流の記号と流れる向きを、次のように \(I_1、I_2\) と予想して決めます。

電流の流れる向きは、仮定で決めてかまいません。
決めた向きと逆の場合は、計算の結果がマイナスになります。

キルヒホッフの第2法則で方程式を立てるには
閉回路の向き と 起電力と電圧降下の正負 について理解する必要があります。

問題の回路では、3つの閉回路を考えることができます。
★ 1つ目の閉回路は、赤の矢印の回路です。

★ 2つ目の閉回路は、緑の矢印の回路です。

★ 3つ目の閉回路は、青の矢印の回路です。

★ 問題の未知数が \(I_1、I_2\) の2つなので、2つの式を立てればよいわけです。

■ 起電力の正負
閉回路の方向と起電力の方向が「同じ場合」、その起電力を 正(プラス) とします。
閉回路の方向と起電力の方向が「逆向きの場合」、その起電力を 負(マイナス) とします。

■ 電圧降下の正負
閉回路の方向と電流の流れる方向が「同じ場合」、その電圧降下を 正(プラス) とします。
閉回路の方向と電流の流れる方向が「逆向きの場合」、その電圧降下を 負(マイナス) とします。

赤の閉回路
★ キルヒホッフの第2法則は 起電力の和=電圧降下の和 です。

起電力と閉回路の向きが同じなので、起電力はプラスです。
2つの抵抗に流れる電流と閉回路の向きが同じなので、電圧降下はプラスです。
\(120=10I_1+10(I_1+I_2)\)
\(120=20I_1+10I_2 \cdots (1)\)

緑の閉回路


120Vの起電力は、プラスです。
10Vの起電力は、マイナスです。
10Ωの抵抗の電圧降下は、プラスです。
20Ωの抵抗の電圧降下は、マイナスです。

\(120-10=10I_1-20I_2\)
\(110=10I_1-20I_2 \cdots (2)\)

式(1)の両辺を2倍します。
\(240=40I_1+20I_2 \cdots (3)\)

式(3)と式(2)の両辺を加算します。
\(350=50I_1\)
\(I_1=7\) [A] 

式(2)に \(I_1=7\) を代入すると
\(110=10×7-20I_2\)
\(I_2=-2\) [A] 

\(I_2=-2\) [A] ということは、仮定した電流の向きと逆の方向を表しています。

★ 各枝路に流れる電流は次のようになります。

■ 任意の閉回路とは
任意の閉回路とは、どのような回路を通っても
スタートから出発してスタートに戻る回路ということです。

スタートはどこから始めても構いません。

ループ電流法

★ キルヒホッフの第2法則を使って回路を解く方法のことを 「ループ電流法」 といいます。

■ ループ電流法の手順

  1. 回路に流れる電流を定義します。
    電流の向きと電流の記号 \(I_1\) のように決めます。自分の好きなように決めて構いません。
  2. 任意の閉回路と向きを決めます。
  3. 閉回路の方程式を立てます。
  4. 立てた連立方程式をときます。

■ 例題
次の回路に流れる電流をループ電流法で求めよ。

<解答例>
回路に流れる電流の記号と向きを決めます。

次に閉回路と閉回路の向きを決めます。

方程式を立てます。
\(50V-20V=10I+20I\)

\(30I=30\) から

\(I=30\) [A] になります。

練習問題

■ 問題1
次の回路に流れる電流 \(I_1、I_2、I_3\) を求めよ。

<解答例>
1.分岐点 \(\rm P\) における電流の関係は、キルヒホッフの第1法則から

\(I_1-I_2+I_3=0\)
\(I_1+I_3=I_2\cdots(1)\)

2.図の上の回路で矢印の方向に閉回路を考えたとき、キルヒホッフの第2法則から

\(5I_1+20I_2=12\cdots(2)\)

3.図の下の回路で矢印の方向に閉回路を考えたとき、キルヒホッフの第2法則から

\(I_1+I_3=I_2\cdots(1)\)
\(5I_1+20I_2=12\cdots(2)\)
\(10I_3+20I_2=11\cdots(3)\)

式(1)を式(2)に代入すると
\(5I_1+20(I_1+I_3)=12\)
\(25I_1+20I_3=12\cdots(4)\)

式(3)を変形して、式(2)に代入すると
\(20I_2=11-10I_3\)
\(5I_1+(11-10I_3)=12\)
\(5I_1-10I_3=1\cdots(5)\)

式(5)を変形して、両辺を2倍すると
\(20I_3=10I_1-2\cdots(6)\)

式(6)を式(4)に代入すると
\(25I_1+(10I_1-2)=12\)
\(35I_1=14\)
\(I_1=0.4\) [A]

\(I_1\) を式(6)に代入すると
\(I_3=0.1\) [A]

\(I_2=I_1+I_3\) ですから
\(I_2=0.4+0.1=0.5\) [A] になります。

■ 問題2
次の回路の電流 \(I_1、I_2\) を求めよ。

<解答例>
ここではループ電流法を使って、回路を解きます。

\(10\) [Ω] に流れる電流を \(I_1-I_2\) とします。

閉回路と向きを決めます。

閉回路1で式を立てます。
\(58+18=6I_1+4I_2\)
\(76=6I_1+4I_2\cdots(1)\)

閉回路2で式を立てます。
\(18=4I_2-(I_1-I_2)×10\)
\(18=-10I_1+14I_2\cdots(2)\)

連立方程式を解きます。
式(1)に5を掛けて、式(2)に3を掛けて足し算をします。
\(380=30I_1+20I_2\)
\(54=-30I_1+42I_2\)

2つの式を足し算します。
\(434=62I_2\)
\(I_2=7\) [A]

\(I_2\) を式(2)に代入すると
\(18=-10I_1+14×7\)
\(I_1=8\) [A]

したがって
\(I_1=8\) [A] \(I_2=7\) [A]

\(10\) [Ω] に流れる電流は次のようになります。
\(I_1-I_2=1\) [A]

以上で「キルヒホッフの法則」の説明を終わります。