
この記事で書いていること
- この記事では「重ね合わせの理」とは何かを説明し、電気回路における使い方を紹介します。
- 一般的に電圧源の回路が多いですが、電流源の回路についても簡単に説明します。
- 例題を使って実際に問題を解くことで、重ね合わせの理という法則の理解を深めます。
重ね合わせの理とは

重ね合わせの理の使い方
- 回路に複数の電源がある場合
- 回路にある電源を1つ残し、他の電源は短絡 する。
電源が 電流源の場合は開放 して除去します。 - 電源ごとに電流を求める。
- 最後に 電源ごとの電流の和 が、もとの回路に流れる電流になるという法則です。
重ね合わせの理の説明
■ 重ね合わせの理を、次の回路で説明します。

1.この回路は、電源ごとに次の2つの回路に分けられます。

2.求める電流は、2つの回路に流れる電流の和で求められます。
\(I=I_1+I_2\) となります。
重ね合わせの理の使い方
重ね合わせの理 で次の回路を解いて見ます。

重ね合わせの理では回路を、次のように分けて考えます。
★ 回路1 50Vの電源を残し、他の電源を短絡します。

回路に流れる電流を求めます。
\(I_1=\cfrac{50}{5}=10\) [A]
★ 回路2 20Vの電源を残し、他の電源を短絡します。

回路に流れる電流を求めます。
\(I_2=\cfrac{20}{5}=4\) [A]
★ 電源ごとに流れる電流を求める。
回路に流れる電流は、2つの回路に流れる電流の和になります。
\(I=I_1+I_2=10-4=6\) [A]
右向きの電流を「正」とすると
\(I_1\) は正の値
\(I_2\) は負の値になります。
重ね合わせの理を電源ごとの回路にする方法
重ね合わせの理で回路を分割する手順を説明します。
回路に流れる電流の記号と向きを決めます。
電流の向きは適当に決めてOKです。決めた向きと違う場合は値が負になります。

電源 \(E_1\) を残して、他の電源を短絡します。
電流の記号と向きを決め
各枝路に流れる電流を求めます。

電源 \(E_2\) を残して、他の電源を短絡します。
電流の記号と向きを決め
各枝路に流れる電流を求めます。

電源ごとに流れる電流の和が求める電流の値です。
\(I_1=I_{1a}-I_{1b}\)
\(I_2=I_{2b}-I_{2a}\)
\(I_3=I_{3a}+I_{3b}\)
重ね合わせの理(電圧源と電流源が混在する場合)
回路に電圧源と電流源が混在する場合
電圧源\(\cdots\)短絡します。
電圧源の内部抵抗は非常に小さいので短絡する。
電流源\(\cdots\)開放します。
電流源の内部抵抗は非常に大きいので開放する。
電圧源と電流源の回路の解き方
次の回路には電圧源と電流源があります。
■ \(3\) [Ω] の抵抗に流れる電流 \(I\) [A] を求めよ。

<解答例>
まず、電圧源だけの回路にします。
電流源は、開放して取り除きます。

回路に流れる電流を計算する。
\(I_1=\cfrac{4}{3+5}=0.5\) [A]
電流源だけの回路にします。
電圧源は短絡します。

回路に流れる電流を計算する。
\(I_2\) は抵抗が並列接続になっているので、分流の法則 で求めます。
\(I_2=2×\cfrac{5}{3+5}=1.25\) [A]
回路に流れる電流 \(I\) は \(I_1\) と \(I_2\) の和になります。
\(I=I_1+(-I_2)=0.5-1.25=-0.75\) [A] になります。
\(3\) [Ω] の抵抗に流れる電流 \(I_2\) は \(I_1\) の向きを正方向とすれば
\(I_2\) は逆方向になっているので \(I=I_1-I_2\) になります。
電流 \(I\) の符号が マイナス なので、向きは左向きになります。

練習問題
問題1
重ね合わせの理を使って、次の回路の電流 \(I_1、I_2、I_3\) を求めよ。

<解答例>
左側の 48V の電源を残して計算します

合成抵抗は
\(R_a=2+\cfrac{2×2}{2+2}=3\) [Ω]
\(I_{1a}=\cfrac{48}{3}=16\) [A]
\(I_{2a}=16×\cfrac{2}{2+2}=8\) [A]
\(I_{3a}=16×\cfrac{2}{2+2}=8\) [A]
右側の 12V の電源を残して計算します

合成抵抗は
\(R_b=2+\cfrac{2×2}{2+2}=3\) [Ω]
\(I_{2b}=\cfrac{12}{3}=4\) [A]
\(I_{1b}=4×\cfrac{2}{2+2}=2\) [A]
\(I_{3b}=4×\cfrac{2}{2+2}=2\) [A]
各枝路の電流を合計して \(I_1、I_2、I_3\) を求める。
\(I_1=I_{1a}-I_{1b}=16-2=14\) [A]
\(I_2=I_{2a}-I_{2b}=8-4=4\) [A]
\(I_3=I_{3a}+I_{3b}=8+2=10\) [A]

問題2
電流 \(I_1、I_2、I_3\) を求めよ。

<解答例>
左側の 12V の電源を残して計算します。

合成抵抗は
\(R_a=8+\cfrac{4×2}{4+2}=\cfrac{28}{3}\)
\(I_{1a}=\cfrac{9}{7}\)
\(I_{2a}=\cfrac{6}{7}\)
\(I_{3a}=\cfrac{3}{7}\)
右側の電源を残して計算します。

合成抵抗は
\(R_b=2+\cfrac{8×4}{8+4}=\cfrac{14}{3}\)
\(I_{1b}=\cfrac{4}{7}\)
\(I_{2b}=\cfrac{12}{7}\)
\(I_{3b}=\cfrac{8}{7}\)
各枝路の電流を合計して、 \(I_1、I_2、I_3\) を求めます。
\(I_1=I_{1a}-I_{1b}=\cfrac{9}{7}-\cfrac{4}{7}=\cfrac{5}{7}\) [A]
\(I_2=I_{2b}-I_{2a}=\cfrac{12}{7}-\cfrac{6}{7}=\cfrac{6}{7}\) [A]
\(I_3=I_{3a}+I_{3b}=\cfrac{3}{7}+\cfrac{8}{7}=\cfrac{11}{7}\) [A]

問題3
重ね合わせの理を使って、次の回路の電流 \(I_1、I_2、I_3\) を求めよ。

<解答例>
左側の 20V の電圧源を残して計算します
電流源は開放するので次のような回路になります。
各電流を \(I_{1a}、I_{3a}\) とします。

合成抵抗は
\(R_a=12+4=16\) [Ω]
\(I_{1a}=I_{3a}=\cfrac{20}{16}=1.25\) [A]
右側の 1A の電流源を残して計算します
電圧源は短絡するので次のような回路になります。
各電流を \(I_{1b}、I_{2b}、I_{3b}\) とします。

\(I_{2b}=1\) [A]
\(I_{1b}=1×\cfrac{4}{12+4}=0.25\) [A]
\(I_{3b}=1×\cfrac{12}{12+4}=0.75\) [A]
各枝路の電流 \(I_1、I_2、I_3\) を求める。
\(I_1=I_{1a}-I_{1b}=1.25-0.25=1\)[A]
\(I_2=I_{2b}=1\) [A]
(I_3=I_{3a}+I_{3b}=1.25+0.75=2\) [A]

重ね合わせの理のまとめ
重ね合わせの理の利点は
回路中に一つの電源(起電力)しか含まれていないように置きかえるので
抵抗の直列接続、並列接続の回路として扱えるので、計算が簡単になります。
以上で「重ね合わせの理の使い方」の説明を終わります。