磁界の強さ
磁界の強さは、\(H\) で表し、単位には、[A/m] を使います。
([A/m] は [N/Wb] と同じです。)
磁界 \(H\) は、その点に +1Wb の 「単位正磁極」を置いたときに、この単位正磁極に働く力の「大きさと方向」で表します。つまり、磁界はベクトル量になります。
磁界の強さの公式
透磁率 \(μ\) [H/m] の媒質中において、磁極の強さ \(m\) [Wb」 の点から \(r\) [m] 離れた 点における
磁界の強さ \(H\) [A/m] は次のようになります。
\(H=\cfrac{m}{4πμr^2}\)\(=k_m\cfrac{m}{μ_rr^2}\) [A/m]
\(H=6.33×10^4\cfrac{m}{μ_rr^2}\) [A/m]
\(k_m=\cfrac{1}{4πμ_0}=6.33×10^4\) [N・m2/Wb2]\(\cdots\)定数
\(μ_0=4π×10^{-7}\) [H/m]\(\cdots\)真空の透磁率
\(μ=μ_0μ_r\) [H/m]\(\cdots\)透磁率
\(μ_r\)\(\cdots\)比透磁率
\(μ\cdots\)透磁率 [H/m]
\(μ_0\cdots\)真空の透磁率 [H/m]
\(μ_r\cdots\)比透磁率 空気中では、\(μ_r=1\) です。
磁界の合成
磁極が複数ある時に作られる磁界の合成は、それぞれの磁極が作る磁界の「ベクトル和」で求められます。
磁界中の磁極に働く力
磁界の強さが \(H\) [A/m] の磁界中にある、\(m\) [Wb] の磁極に働く力は
\(F=mH\) [N] になります。
これは、磁界の強さが
\(H=\cfrac{m}{4πμr^2}\) [N/Wb]=[A/m] ですから、磁界の強さ \(H\) [N/Wb] の中に \(m\) [Wb] の磁極を置けばこれに働く力は
\(F=mH\) [N] になります。
磁力線と磁束密度
磁界中にある小さな正磁極が、移動した線の軌跡を「磁力線」といいます。
磁力線の特徴
1.磁力線はN極から出て、S極に入る。
2.磁界の方向は、その点の磁力線の接線の方向になる。
3.\(H\) [A/m] の磁界中では、断面 1 m2 当たりに \(H\) 本の磁力線が通ると考えます。
4.磁力線同士は交差しない。
磁束密度
●磁束
磁界の強さ \(H\) [A/m] は媒質により変化します。
そこで、媒質に無関係の「磁束」というものを考えます。
1.\(+m\) [Wb] の磁極から \(m\) 本の磁束が出ていると決めます。
2.磁束の記号は \(\phi\) 、単位はウェーバ [Wb] を使います。
●磁束密度
1.磁束の方向と直角な面の、1 m2 当たりの磁束数を磁束密度といいます。
2.磁束密度の記号は\(B\)、単位はテスラ [T] を使います。
練習問題
例題1
磁極の強さが \(1\) [Wb] の磁極に \(1\) [N] の力が働いている。その点の磁界の強さ \(H\) [A/m] を求めよ。
<解答>
磁界の強さ \(H\) にある磁極に働く力 \(F\) は
\(F=mH\) [N] から
\(H=\cfrac{F}{m}=\cfrac{1}{1}=1\) [A/m]
例題2
真空中で \(1×10^{-5}\) [Wb] の磁極から \(20\) [cm] 離れた点の磁界の強さ H [A/m] を求めよ。ただし、\(μ_0=4π×10^{-7}\) とする。
<解答>
問題を図にすると次のようになります。
磁界の強さは公式から
\(H=\cfrac{m}{4πμ_0r^2}\)\(=6.33×10^{4}\cfrac{m}{r^2}\) [A/m]
数値を代入します。
\(m=1×10^{-5}\)
\(r=20×10^{-2}\)
\(H=6.33×10^{4}\cfrac{1×10^{-5}}{(20×10^{-2})^2}\)\(=\cfrac{6.33×10^4×10^{-5}}{4×10^{-2}}\)\(≒1.58×10^{4-5+2}\)\(=1.58×10^1\)
\(H=15.8\) [A/m] になります。
補足
電荷と磁荷の比較
電荷 | 磁荷 | ||
---|---|---|---|
電荷 \(Q\) | \(Q\) [C] | 磁荷 \(m\) | \(m\) [Wb] |
電界 \(E\) | \(E=\cfrac{Q}{4πεr^2}\) [V/m] | 磁界 \(H\) | \(H=\cfrac{m}{4πμr^2}\) [A/m] |
誘電率 \(ε\) | \(ε=ε_0ε_r\) [F/m] | 透磁率 \(μ\) | \(μ=μ_0μ_r\) [H/m] |
\(ε_0\) [F/m] 真空中の誘電率 | \(μ_0\) [H/m] 真空中の透磁率 | ||
\(ε_r\) [F/m] 比誘電率は真空中、空気中は \(ε_r=1\) | \(μ_r\) [H/m] 比透磁率は真空中、空気中は \(μ_r=1\) | ||
電束 | \(Q\) [C]=\(Q\) 本の電束 1 [C] の正電荷から 1本の電束 |
磁束 \(\phi\) | \(m\) [Wb]\(=m\) 本の磁束 |
電束密度 \(D\) | \(D=\cfrac{Q}{4πr^2}\) [C/m2] | 磁束密度 \(B\) | \(B=μH\) [T] |
\(D=εE\) [C/m2] | |||
クーロンの法則(静電気) | \(F=\cfrac{1}{4πε_0}・\cfrac{Q_1Q_2}{ε_rr^2}\) [N] | クーロンの法則(磁気) | \(F=\cfrac{1}{4πμ_0}・\cfrac{Q_1Q_2}{μ_rr^2}\) [N] |
\(F=9×10^9×\cfrac{Q_1Q_2}{ε_rr^2}\) [N] | \(F=6.33×10^4×\cfrac{Q_1Q_2}{μ_rr^2}\) [N] | ||
\(k=\cfrac{1}{4πε_0}≒9×10^9\) [N・m2/C2] | \(k=\cfrac{1}{4πμ_0}=6.33×10^4\) [N・m2/Wb2] | ||
電界中 \(E\) で働く力 | \(F=qE\) [N] | 磁界中 \(H\) で働く力 | \(F=mH\) [N] |
以上で「磁界の強さと磁束密度」の説明を終わります。