問8
電験三種過去問題の平成21年 理論の問8 抵抗とコイルの回路に流れる電流の位相差に関する問題です。
問 8
図のように \(R=\sqrt{3}ωL\) [Ω] の抵抗、インダクタンス \(L\) [H] のコイル、スイッチ S が角周波数 \(ω\) [rad/s] の交流電圧 \(\dot{E}\) の電源に接続されている。
スイッチ S を開いているとき、コイルを流れる電流の大きさを \(I_1\) [A]、電源電圧に対する電流の位相差を \(θ_1\) [°] とする。
また、スイッチ S を閉じているとき、コイルを流れる電流の大きさを \(I_2\) [A]、電源電圧に対する電流の位相差を \(θ_2\) [°] とする。
このとき、\(\cfrac{I_1}{I_2}\) 及び \(|θ_1-θ_2|\) [°] の値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

<解答例>
抵抗 \(R\) とインダクタンス \(L\) のインピーダンスは \(R+jωL\) で表されます。
また、インピーダンスの大きさは \(\sqrt{R^2+(ωL)^2}\) になります。
■ スイッチ S が開いているとき
\(\dot{I_1}=\cfrac{\dot{E}}{R+jωL}\) になります。
問題文で \(R=\sqrt{3}ωL\) [Ω] となっていますので、これを上の式に代入して整理します。
\(\dot{I_1}=\cfrac{\dot{E}}{\sqrt{3}ωL+jωL}\)
\(=\cfrac{(\sqrt{3}ωL-jωL)\dot{E}}{(\sqrt{3}ωL+jωL)(\sqrt{3}ωL-jωL)}\)
\(=\cfrac{ωL(\sqrt{3}-j)\dot{E}}{4(ωL^2)}\)
\(\dot{I_1}=\left(\cfrac{\sqrt{3}}{4ωL}-j\cfrac{1}{4ωL} \right)\dot{E} \cdots(1)\)
電流 \(I_1\) [A] の大きさは、次のようになります。
\(I_1=\cfrac{E}{\sqrt{(\sqrt{3}ωL)^2+(ωL)^2}}=\cfrac{E}{2ωL}\)
\(θ_1=tan^{-1}\left(\cfrac{ωL}{R}\right)=tan^{-1}\left(\cfrac{ωL}{\sqrt{3}ωL}\right)=tan^{-1}\left(\cfrac{1}{\sqrt{3}}\right)=30°\)(遅れ電流)
■ スイッチ S が閉じているとき
負荷はインダクタンスだけの回路になります。
電流の大きさ \(\dot{I_2}\) [A] は、次のようになります。
\(\dot{I_2}=\cfrac{\dot{E}}{jωL} \cdots(2)\)
\(∴I_2=\cfrac{E}{ωL}\)
\(θ_2=tan^{-1}\left(\cfrac{ωL}{0}\right)=tan^{-1}∞=90°\)(遅れ電流)
したがって、電流の比は次のようになります。
\(\cfrac{I_1}{I_2}=\cfrac{\cfrac{E}{2ωL}}{\cfrac{E}{ωL}}=\cfrac{1}{2}\)
\(|θ_1-θ_2|\) は (|30°-90°|=60°\)
答えは (2) になります。
また、別解として
\(|θ_1-θ_2|\) は \(\dot{I_1}-\dot{I_2}\) で表すことができる。
式(1)-式(2)で、共通の \(\dot{E}\) は省略すると、
\(\left(\cfrac{\sqrt{3}}{4ωL}-j\cfrac{1}{4ωL} \right)-\cfrac{\dot{E}}{jωL}=\cfrac{\sqrt{3}}{4ωL}+j\cfrac{3}{4ωL}\)
この関係を、ベクトルで表示すると

したがって、\(θ=60°\) になります。
正解は(2)になります。